前回からの続きです – (2)。
↓まずはケーブルのPC側付近を一度切断してシールド/GND,0Vの接続状態を変えてみます。
PC接続プラグ付近でUSBの0Vと3.5mmプラグのシールド/GNDをくっつけてみます。(後参照用にこれを実験①とします)
接続図1でいうと Gw2 と Ew2 をくっつけた状態です。
これで試してみると、変わらず「ピー」が出ます。そしてなんと3.5mmプラグを外しても「ピー」が出続けています。前回記事で、3.5mmプラグを接続せずUSB電源接続のみでは 「ピー」が出ないというのがこの対策作業のそもそもの発端ですので、この変化は「ピー」の対策のヒントになりそうです。
↓USBの0Vとと3.5mmプラグのシールド/GND接続を元通りにして、今度はPCスピーカー側の基板の音声入力ケーブル接続を変えてみます。
信号線(接続図1の Sw )の影響を分離するためGND線(接続図1の Gw )のみを基板に当てます。
↓AA画像(左側) / BB画像(右側)
AA画像(左側)は元のコネクタ接続位置の裏側端子(接続図1の G3 )に当てた場合で、当然これまで同様「ピー」が出ます。
BB画像(右側)のところ(接続図1の E4 )に当てた場合は 「ピー」が出ません!。
ここで、当たり前なんですが、そもそもスピーカーの音はどんな時に出るのかと考えてみます。ここでは接続図1の S6 – G6 間に交流的な電流がある時 = S6 – G6 間に交流的な電圧差がある時です。アンプ A1 は何を増幅しているのかと考えると、S5 の電圧 ですが、より詳しくいうと G5 を基準電圧とした S5 との電圧差 を増幅しています。S6 – G5 間はスピーカー以外は接続されていないので G6 – G5 間を便宜的にスピーカーの一部とみなすと、G5 – S5 間に信号(交流的な電圧差)がある時、G5 – S6 間にこの信号が増幅された電圧が現れ、スピーカーから音が出るということになります。アンプの入力、出力ともG5の電圧が基準となっています。
G5 – S5 間に「ピー」という交流的な電圧差(信号)があるとき「ピー」が聞こえ、G5 – S5 間に「ピー」という交流的な電圧差(信号)が無いなら「ピー」は出ません。
プリント基板のパターンにも小さいながら電気抵抗があり、電流が流れる2点間には小さいながら電圧差(電圧降下)が発生します。その電流が交流なら交流的な電圧差(信号)となり、「ピー」電流なら「ピー」という電圧差になります。電流が流れていない2点間(途中のどの部分にも電流が流れていない2点間)には、電圧差(電圧降下)は発生しません。
上のAA、BB画像では信号線(Sw)は接続されていない( S3 , S4 には電流が存在しない)ので、S5 の電圧は(アンプの入力電流は非常に小さいので無視すれば) G4、そして G3 の電圧とも同じと考えられます。とすれば、G5 と G3 の間に「ピー」の交流的な電圧差があるのがAA画像(左側)で、無いのがBB画像(右側)ということになります。違いは何なのでしょうか?
BB画像(右側)は Gw を G3 には接続せず E4 に接続した状態です(↓接続図1-2)。G3 – G2 間の接続が無いので( S5 のアンプ入力電流は非常に小さいので無視すれば) E4 – S5 間の経路上には電流が無く、その1点である G3 は E4 と同じ電圧、であれば S5 と E4 も同じ電圧です。
次に、G5 – E4 の間に電流がなければ(無視できるほど小さければ) G5 と E4 の電圧は同じになります。G5 と E4 の電圧が同じ状態で、 S5 と E4 の電圧が同じなら S5 と G5 の電圧は同じであり、つまりスピーカーの音(「ピー」)は出ません。
(この説明では意図的に除外しましたが、G5 – E4 間にはアンプICの5V電源 P5 からの電源電流が流れています。電源に交流的な「ピー」電流があれば G5 と E4 の間に「ピー」という交流的な電圧差が出て、すると G5 と S5 の間にも「ピー」の電圧差が現れてスピーカーの音になります。BB画像(右側)の状態では「ピー」が出ていないので P5 – G5 間(アンプICの5V-0V間) には交流的な「ピー」電流が十分少ないのだろうと思います(アンプICのPSR(電源ノイズ除去機能)によっても抑圧されます))
↓BB画像の接続状態(接続図1-2)
同様に
↓AA画像の接続状態(接続図1-3)
接続図1-2(=BB)では、Ew(0V線) と Gw(音声のGND線) の接続経路として、基板パターンの E4 – G3 がなくなっていることがわかります。前述のとおり、G5 と G3 の間に「ピー」の交流的な電圧差があるのがAA画像(左側)(接続図1-3)で(これも前述ですが)プリント基板のパターンにも小さいながら電気抵抗があり、電流が流れる2点間には小さいながら電圧差(電圧降下)が発生するので、G5 – G3 間の「ピー」の交流的な電圧差は E4 – G3 間に「ピー」電流が存在するために発生していることがわかります。実験①(当ページ内前出)で3.5mmプラグを外しても「ピー」が出ていることからわかるのは、USBプラグをつなぐと Ew には常に「ピー」電流があり、さらに3.5mmプラグをつなぐと(または実験①の接続であっても) Gw にはこの Ew の「ピー」電流が分岐して、詳しくは、 E3 – E2 と G3 – G2 間の各抵抗値の比に応じた「ピー」電流が流れている(だろう)ということです。
接続図1では簡便のため音声は片チャンネルのみ記載していますが、実際はL,Rありますので、実際の Gw , Ew の各線は、Gw: AWG#26程度x2 , Ew: AWG#28程度 と、Gw のほうが Ew より倍以上太く低い抵抗値であり「ピー」電流の多くが Gwに流れていると思われます。
これを増幅するアンプIC A1 TDA2822のゲインはプリセット40dBで、これはゲイン低めのマイクアンプという感じで G5 に対する G3 の「ピー」がマイクレベル位に小さくても十分に増幅できるゲインです。
ところで、E4 – G3 は、基板パターン上でどの程度のものなのでしょうか
↓画像
仕事でこの手の基板の設計をしている僕が見ても、え、これだけ?これだけであんなノイズになるの?という印象です。
そしてこの基板のパターンは、闇雲に回路図の端子を繫いだものではなく、GNDのパターンにアナログ回路設計的な配慮のある(所謂リターンパスを考慮した)設計です。基板パターンに電源整流回路があるのでAC入力の基板を流用しているようで、基板設計時にはこういう使われ方は想定していなかったのではと思います。ともかく、特定の(しかも現在ではありふれた)条件では、この程度のパターンでも不快なレベルのノイズに結びつくという実例として認識を新たにしました。
この接続の解決として、配線を基板に直にはんだ付けせず、元の接続にも戻せる(戻しませんが)ように考えて
↓画像のように加工しました。(緑色の線がGND線接続経路変更の追加ジャンパーです)
さて、これでボリュームを上げてみると・・
減ってはいますが「ピー」がいまだしっかりいます。
ボリューム最小では、かなり小さくなって気にならない程度にはなりましたがまだいます。