前回からの続きです – (3)。
前回の加工を反映した接続図
接続図1a
ボリューム最小では、かなり小さくなって気にならない程度になりましたが、ボリュームを上げるに伴って「ピー」が大きくなる。これは、接続図1aでは、G4 – S4 間に 「ピー」電圧があり、それがボリュームで増減されている 。ここからたどって、G4電圧 = E4電圧 (≒G5電圧) , S4電圧 = S3電圧(とします) ですので、 E4 と S3 の間に 「ピー」電圧があるということです。S3 – S2 間には他に接続が無いのでここでは S2電圧 = S3電圧 とします(実際はG4やS5から交流的な電流が流れ込んでいる場合もありこれを考慮しなければならないこともありますが、ここでは無いものとします)。
PC内部の G2 , G1 , E1 , E2 間の抵抗や電流がどうなっているかはわかりませんが今便宜的に G2 – G1 – E1 – E2 間は非常に抵抗が小さくこれらの間に電圧差は無いものと仮定します(実際はあるかもしれません。後ほど)。
PC側のアンプA0 の出力である S2電圧 は G1電圧 を基準としています。E4 – G2 間と、加えてこれと並列に接続されている E4 – E2 間の両方に「ピー」電流が流れているので、 G1(=G2) と E4 の間には「ピー」電圧(電流による電圧降下)があります。S3(=S2) の電圧基準は G1(=G2) ですので、ボリュームを上げると出てくる「ピー」は、E4 – G2 および E4 – E2 間に流れる「ピー」電流によって作り出されていると考えられます。
DC電源0Vと音声GNDが、PC側で E2 と G2 、PCスピーカー側で E3 の1ヶ所でまとめられて(配線加工前でも E4 と G3 として)それぞれくっついている以上、「ピー」電流は G2 , E2 に対して(=G1 に対して) E4 の「ピー」電圧(電流による電圧降下)を作ってしまいます。(この、電源0Vと信号GNDの関係は、機器設計においても高性能化に際してノイズやクロストークについての重要な問題です)
電源のノイズといった場面で威力を発揮してくれそうなのがコモンモードチョーク(以下、CMCと表記)です(CMCの働きについては各メーカーサイトで詳しく説明されていますのでそちらをご参考ください)。CMCはコモンモードノイズ電流を阻止するための部品ですが、有効周波数範囲のディファレンシャルモード(ノーマルモード)電流を最大化する働きがあります。但し、CMC、特に電源用CMCは直流を含めてディファレンシャルモード電流は対称な電流を扱う(なので最大化も何も常に最大です)という前提があり、ここが定常的に非対称な電流となるのはイレギュラーな使い方で、この場合のスペックもデータシート記載がありません。今回は 0V側 でCMCと並列に接続経路が存在するので直流についてCMCの電流は非対称になります。
CMCの記載を加えた下記接続図1bから、CMCの直流抵抗は基板パターンやケーブルの直流抵抗より大きいので、0Vの直流電流については、E3 – E2 電流より E3 – G2 電流のほうが大きくなるだろうことがわかります。つまり、CMCの 5V と 0V の直流電流は大分非対称になります。
接続図1b
CMCの接続を試す前に、外部の実験用電源から5Vを供給してPCにはUSBの0Vのみと3.5mmプラグを接続してみます。この実験でUSBの5V電源のみがノイズ源なのかを確認します。もっと前にやるべき実験なのですが説明の都合でここになってしまいました。↓画像の接続でワニ口クリップから外部5Vを供給します。(CMC接続の加工途中で接続を変更して実験しているためCMCの端子をハンダターミナルとしてだけ利用しています。CMCはこの実験の動作には影響していません)
外部5Vを供給します。5Vの消費電流の直流分は 12mAでした。次にUSB,3.5mmプラグを接続します。USBの0Vまたは3.5mmプラグどちらかを繫いだ場合は静かですが、USBの0Vと3.5mmプラグ両方を繋ぐと「ピー」が出ました。USBの5Vは繋いでいないのにです。USBの0Vと3.5mmプラグのGNDの間に「ピー」電流が流れているということです。前述の PC内部のGNDと0Vに電圧差は無いと仮定・・というわけにはいきませんでした。これは、何モードのノイズというのか、PC側マザーボードの単純でない原因によって現れるものだと思います(ここ(PC側)に手をつけたくありません)。
CMCはディファレンシャルモード電流以外の電流に効果(対称でない電流を阻止する)があるのでここで確認された 0V – GND間の 「ピー」電流にも効果があるのではと思います。
今回使うCMCは50円で入手した電源用の約40mH/0.6Aとインダクタンスの大きなものです(このPCスピーカーは数年前に確か500円位で入手した物(新品です。当時は安かった)なので追加対策部品が数百円レベルになるともうコスト的なバランスが悪いのでその点を気にしながら進めています)。CMCの二次側に、気休めに0.1uFのコンデンサをつけていますが無くても効果は変わりません。
「ピー」ノイズの大幅な改善が得られました。条件が限られると思いますが、今回は非対称な直流で磁気飽和せずに効果を発揮してくれました。これなら前回記事の接続図1aとなる配線接続変更はしなくてもCMC追加だけでこの状態になったのではと思います。
動作としては、「ピー」電流(の大部分)がCMCによって強制的に対称な電流として 5V , 0V の2線間とPCスピーカー側の10uF(コンデンサー)で折り返す経路に閉じ込められた格好になり、接続図1bの G2 – E3 間(3.5mmプラグのGNDとPCスピーカーのGND間)には「ピー」電流が(ほとんど)流れないため、G2(=G1) に対して E3(=G3=G4) には「ピー」電圧が(ほとんど)発生しません。よって E4 – S4(からボリュームを経由した S5) 間、それがアンプA1を通った S6 – E4 間にも「ピー」電圧が(ほとんど)発生しません。( ここの文章のところどころに出てくる”(ほとんど)”で「ピー」が完全に沈黙したわけではないことをご想像いただけると思います)
しかし「ピー」 はかなり小さくなったのですが今度は別な気になることが出てきました・・
私物ということでまた加工が乱暴で恐縮ですが結束バンドとホットボンドでケーブルの引っ張られ対策をして熱収縮チューブで覆って完了です。