興味深いページを見つけました(というかだいぶ以前に見つけていたことを思い出しました)。
T. Sato様のHP内「雑音の低減のための両端でのケーブル・シールドの接続」
by Tony Waldron and Keith Armstrong 翻訳:T. Sato様
http://t-sato.in.coocan.jp/emcj/0205-75-j.html
T. Sato様サイトのこのページが属するブロックのタイトルは”電気製品の EMC/安全適合性”ですが、アナログオーディオ的に興味深い内容があります。
参照ページを乱暴にかいつまんでしまって申し訳ないのですが、
*ピン1問題について
ピン1問題の”ピン1″というのは、XLR3(3ピンキャノン)の1番ピンのことで、XLR入出力の機器について、リヤパネルのXLR座1番ピンと回路GNDとの接続がXLRのピンにはんだ付けされた電線を介してプリント基板上で行われているもの(今どきの製品では見かけませんが)で発生する場合がある問題です(次で合わせて説明)。
*参照ページの表題にもなっているシールドの両端接続について
欧米ではプロオーディオシステムの配線で音声ケーブルのシールド接続の片端を外す(外したりつけたり試す)(ファンタム電源が通らないのでマイク回線は除くと思いますが)らしいと聞いていましたが実際普通に行われているようです。GNDとアースに関することですので、この点で現状まず日本と差があるのが、金属(導電性)筐体の製品は一般にアース端子付きの3ピンコンセントが使われこのアース(接地)接続は義務である点。日本では(水気のある場所で使用するものなどを除く)100V機器はアース接続は義務ではなく現在の国内流通製品はほとんどが2ピンプラグです(プラグにアース端子無し)。日本製国内流通品を使っている分にはコンセントアース端子経由の機器間のGND接続網は発生しません(注1)。…しかし、内線規程など法的なものもアース付き壁コンセントを推奨してきていますので、時間はかかりそうですが日本も3ピン電源プラグを使ったアース接続が普及していくのだろうと思います。日本の場合アース接続方式が欧米と違うそうなのでアース接続普及で欧米とは違う現象が起こるかもしれません…話がそれました。
アース接続は必須という条件下で、シールド接続の片端を外す、というのは、
ピン1問題とも関連しているのですが、音声ケーブルシールドが両端接続されていて、例えばアース端子から音声ケーブルシールドに流れるノイズ電流がある場合に(コンセント端子側アースによる機器間GND接続と、音声シールド接続による機器間GND接続が、両方同時に存在するのでノイズ電流がある場合両方同時に流れることになる)、ノイズ電流がプリント基板の0V(GND)パターンを通して(=敏感な回路の基準電圧をノイズ電流が揺さぶりながら)流れてしまうので、シールド接続を切ればプリント基板上のノイズ電流をなくせる(=ノイズをなくせる)という手法のようです(義務であるコンセントアース接続は切れないので)。→ → いまやこれはノイズ的に良くないやり方でそもそもこの種のノイズ電流の大部分がプリント基板上を流れてしまうような機器の作りの問題(ピン1問題)だと指摘
日本でシールド接続の片端を外すを実施している設備は僕自身は聞いたことがありませんが、シールド接続とは別な話で、グランド・ループを切る、というのはオーディオ的に基本的なテクニックと思っていました。が、高周波のノイズが以前とは比べ物にならないほど増えた現在、アナログオーディオ機器の接続も参照ページにあるように、
*すべてのケーブルシールドは両端接続する(片端接続はシールドが高周波的なアンテナそのものになってしまう)
*シールドは機器、ケーブル、トータルで”隙間なく”行う(現実的には限度ありますが)
*シールド接続(機器間GND接続)のインピーダンスを徹底的に下げる。加えて、繫げられる箇所は繫ぎまくる(ループ面積を小さくするのが目的なので逆の作用がある(繋ぐと大きなループができるような)箇所は繋ぎません)。
・・切るのではなく、徹底的に繫ぐ、というのが方法論になるということのようです(それでも グランド・ループ は小さいほうがいい、ないほうがいい、という点は基本通りです)。
グランドやアースはとにかく繋げ、ひたすら太くしろ、という話で、昭和の時代(ノイズといえばブーンかジーのハムだった時代)に聞いたわけもわからずの力業でノイズ解決(というか問題を薄める)、が戻ってきたみたいで、あれも方法論として正当だったのかなと感じ入る次第です。
アンバランス機器についても触れています。まずバランス化する、それはできないという場合で問題あるならシールド接続を太くする(場合によっては別途太いGND電線を足すとか)…僕の経験として現場でアンバランス機器にノイズがあってラックマウントの場合、ラックから浮かす(ラックとそのアンバラ機器筐体との電気的な接触をなくす)とノイズが大きく改善する(なくなる)のを何度も経験しています。これは、グランド・ループを切る、状態です。アンバラOUTからアンバラINへの接続は本質的に信号とグランド・ループノイズを区別できないので、ノイズが現れやすいのはわかりますが、ピン1問題のような機器側の問題もある気がします。・・今は自分が設備の現場にかかわる機会がないので予想としてといった程度ですが。
*これはアンバランス機器といってもプロオーディオ設備の話です。ご家庭のシンプルなオーディオ配線で問題になることはないと思います。電源が2ピンプラグならなおさら。
当ページの内容に興味を持っていただいた方は、ぜひ参照元を含むT. Sato様のページを読んでください。ノイズに対して具体的な解決の方法論を含めた多くの情報があります。
注1:この場合も万一の感電防止のためにアース接続は可能なら実施すべきです。安全性の観点からは個々の機器でアースに接続するのがベストでしょうが、接続自体難しい製品も多いので、1箇所、例えばラックキャビネットが金属製ならキャビネット本体、木製なら機器固定ラックアングル金具、などシステムのケーブルがGND共通として多く接続されているところまたは多く接続されている機器(パッチ盤はほとんどがケースも各回線も単独に絶縁されているのでここでいう”ケーブルが多く接続”には含まれません)がいいと思います(そう考えるとラック実装でラックと機器がマウント金具のネジ固定でしっかり電気的に接続される必要があるということになりますが、ラックや機器は大抵、塗装だったりアルマイトだったりの絶縁被膜があるのでしっかり電気的に接続というのは意識しないとなかなか難しいかもしれません)。この接続で感電に対する安全性は高まりますが、もし不幸にもこのシステム内で漏電が発生した場合に、漏電電流がアース接続点までの間にあるシステムのケーブルと接続機器を通過するので、通過経路上にある機器が運悪く故障する可能性があります(くり返しますが漏電が発生した場合です)。その前に漏電ブレーカーが遮断してくれると思いますが、この点一応気に留めておいてください。
漏電ブレーカーと聞いてああそういえばと思った方は漏電ブレーカーの動作テストなどについても調べてみてください。