PCスピーカーの「ピー・・」というノイズの原因(4)

前回からの続きです – (4)。

↓CMC(コモンモードチョーク)を取り付けた現在の接続図(接続図1b)

CMCの効果で「ピー」はかなり小さくなりました。このままでも使用には問題ないレベルと思います。ですが、それまで「ピー」に紛れて聞こえていなかったアンプのホワイトノイズが「ピー」が小さくなったことで実はけっこう大きかったんだなと感じ、気になってきました。

ホワイトノイズはボリュームを絞っても出ているので、ボリューム以降の部分、PCスピーカー内のアンプのゲイン(プリセット40dB)が高すぎるために大きく出ていると思われます。ボリューム部分は 50kΩBカーブのボリュームにオーディオカーブ補正のためと大きすぎるアンプゲインに対応するためのアッテネーター(約24dB)を兼ねた抵抗がついています。このアッテネーターを無くしてその分アンプゲインを下げれば現状のスピーカー音量程度のままホワイトノイズを低減できます。

画像↓ボリューム部分の加工(私物につき加工が乱暴なのはご容赦ください。・・ここは特に乱暴ですね)。

似たようなアンプICのNJM2073のデータシートを参考に外部NFBを追加してアンプゲインを下げます(私物につき加工が乱暴なのはご容赦ください)。画像↓

Rf:4.7k / Rs:820 でゲイン約16dBになり、アッテネーターをなくした分と相殺できましたが、(違う型番なので条件は異なるとはいえ)このデータシート記載での安定動作するゲイン低減の最大量を大分超えてしまっているので、動作が不安定であれば対策をする必要があります。オシロスコープをつないで動作状態を確認したところ、オシレーター1k~2MHzスイープでピークなく穏やかにゲインが下がり、出力クリップ時のリンギングもないので、(私物ということで)特に対策はしなくてOKとしました。

結果、ホワイトノイズは聞こえなくなりました。小さく残っていた「ピー」もアンプゲインを下げた分さらに小さくなりました。それでも完全沈黙とはいかずスピーカーに耳をくっつけると小さく「ピー」と聞こえますが、使用状態ではPCのファンの音も加わるのでスピーカーからの音として聞き取れるノイズはなくなりました。パッシブ部品でのローコストな対策(ICなどを使わない対策)としてはこのあたりが限度と思います。

これ以上の対策は、(通販サイトのレビューなどでもすでによく書かれている方法ですが)PCとは絶縁された別なUSB5V電源を用意するというのが最も効果が大きい正攻法ということになります。この差が現れるのは、PCのUSBはノイズが多く外部アダプターはノイズが少ないから、ということではありません。電源0Vが絶縁されているからです。↓接続図1(=対策加工前の図)で少しご説明すると、外部アダプター使用の場合は接続図1でいうところの E1 – G1 接続が存在しません(絶縁されている)。このため(ノイズも含まれているかもしれない)電源電流の経路が P2 – P3 と E3 – E2 (= 5V – 0V) の線間に逃げ場なく閉じ込められていて、 G3 – G2 (接続図1) 側には 5V – 0V 間に存在している(かもしれない)ノイズ電流が流れ込まない → PC側GNDとPCスピーカー側GNDの間にノイズ電圧が発生しない、となります。

参考用(再) 接続図1(=対策加工前の図)

単に結果と方法をご紹介するのではなく、身近な題材でノイズの原因と対策の過程をお伝えできれば面白いのではないかと記事にしてみましたが、わかりやすいものにはならなかったので反省。


PCスピーカーの「ピー・・」というノイズの原因(3)

前回からの続きです – (3)。

前回の加工を反映した接続図
接続図1a

ボリューム最小では、かなり小さくなって気にならない程度になりましたが、ボリュームを上げるに伴って「ピー」が大きくなる。これは、接続図1aでは、G4 – S4 間に 「ピー」電圧があり、それがボリュームで増減されている 。ここからたどって、G4電圧 = E4電圧 (≒G5電圧) , S4電圧 = S3電圧(とします) ですので、 E4 と S3 の間に 「ピー」電圧があるということです。S3 – S2 間には他に接続が無いのでここでは S2電圧 = S3電圧 とします(実際はG4やS5から交流的な電流が流れ込んでいる場合もありこれを考慮しなければならないこともありますが、ここでは無いものとします)。
PC内部の G2 , G1 , E1 , E2 間の抵抗や電流がどうなっているかはわかりませんが今便宜的に G2 – G1 – E1 – E2 間は非常に抵抗が小さくこれらの間に電圧差は無いものと仮定します(実際はあるかもしれません。後ほど)。
PC側のアンプA0 の出力である S2電圧 は G1電圧 を基準としています。E4 – G2 間と、加えてこれと並列に接続されている E4 – E2 間の両方に「ピー」電流が流れているので、 G1(=G2) と E4 の間には「ピー」電圧(電流による電圧降下)があります。S3(=S2) の電圧基準は G1(=G2) ですので、ボリュームを上げると出てくる「ピー」は、E4 – G2 および E4 – E2 間に流れる「ピー」電流によって作り出されていると考えられます。
DC電源0Vと音声GNDが、PC側で E2 と G2 、PCスピーカー側で E3 の1ヶ所でまとめられて(配線加工前でも E4 と G3 として)それぞれくっついている以上、「ピー」電流は G2 , E2 に対して(=G1 に対して) E4 の「ピー」電圧(電流による電圧降下)を作ってしまいます。(この、電源0Vと信号GNDの関係は、機器設計においても高性能化に際してノイズやクロストークについての重要な問題です)

電源のノイズといった場面で威力を発揮してくれそうなのがコモンモードチョーク(以下、CMCと表記)です(CMCの働きについては各メーカーサイトで詳しく説明されていますのでそちらをご参考ください)。CMCはコモンモードノイズ電流を阻止するための部品ですが、有効周波数範囲のディファレンシャルモード(ノーマルモード)電流を最大化する働きがあります。但し、CMC、特に電源用CMCは直流を含めてディファレンシャルモード電流は対称な電流を扱う(なので最大化も何も常に最大です)という前提があり、ここが定常的に非対称な電流となるのはイレギュラーな使い方で、この場合のスペックもデータシート記載がありません。今回は 0V側 でCMCと並列に接続経路が存在するので直流についてCMCの電流は非対称になります。
CMCの記載を加えた下記接続図1bから、CMCの直流抵抗は基板パターンやケーブルの直流抵抗より大きいので、0Vの直流電流については、E3 – E2 電流より E3 – G2 電流のほうが大きくなるだろうことがわかります。つまり、CMCの 5V と 0V の直流電流は大分非対称になります。
接続図1b

CMCの接続を試す前に、外部の実験用電源から5Vを供給してPCにはUSBの0Vのみと3.5mmプラグを接続してみます。この実験でUSBの5V電源のみがノイズ源なのかを確認します。もっと前にやるべき実験なのですが説明の都合でここになってしまいました。↓画像の接続でワニ口クリップから外部5Vを供給します。(CMC接続の加工途中で接続を変更して実験しているためCMCの端子をハンダターミナルとしてだけ利用しています。CMCはこの実験の動作には影響していません)

外部5Vを供給します。5Vの消費電流の直流分は 12mAでした。次にUSB,3.5mmプラグを接続します。USBの0Vまたは3.5mmプラグどちらかを繫いだ場合は静かですが、USBの0Vと3.5mmプラグ両方を繋ぐと「ピー」が出ました。USBの5Vは繋いでいないのにです。USBの0Vと3.5mmプラグのGNDの間に「ピー」電流が流れているということです。前述の PC内部のGNDと0Vに電圧差は無いと仮定・・というわけにはいきませんでした。これは、何モードのノイズというのか、PC側マザーボードの単純でない原因によって現れるものだと思います(ここ(PC側)に手をつけたくありません)。
CMCはディファレンシャルモード電流以外の電流に効果(対称でない電流を阻止する)があるのでここで確認された 0V – GND間の 「ピー」電流にも効果があるのではと思います。

今回使うCMCは50円で入手した電源用の約40mH/0.6Aとインダクタンスの大きなものです(このPCスピーカーは数年前に確か500円位で入手した物(新品です。当時は安かった)なので追加対策部品が数百円レベルになるともうコスト的なバランスが悪いのでその点を気にしながら進めています)。CMCの二次側に、気休めに0.1uFのコンデンサをつけていますが無くても効果は変わりません。

「ピー」ノイズの大幅な改善が得られました。条件が限られると思いますが、今回は非対称な直流で磁気飽和せずに効果を発揮してくれました。これなら前回記事の接続図1aとなる配線接続変更はしなくてもCMC追加だけでこの状態になったのではと思います。
動作としては、「ピー」電流(の大部分)がCMCによって強制的に対称な電流として 5V , 0V の2線間とPCスピーカー側の10uF(コンデンサー)で折り返す経路に閉じ込められた格好になり、接続図1bの G2 – E3 間(3.5mmプラグのGNDとPCスピーカーのGND間)には「ピー」電流が(ほとんど)流れないため、G2(=G1) に対して E3(=G3=G4) には「ピー」電圧が(ほとんど)発生しません。よって E4 – S4(からボリュームを経由した S5) 間、それがアンプA1を通った S6 – E4 間にも「ピー」電圧が(ほとんど)発生しません。( ここの文章のところどころに出てくる”(ほとんど)”で「ピー」が完全に沈黙したわけではないことをご想像いただけると思います)
しかし「ピー」 はかなり小さくなったのですが今度は別な気になることが出てきました・・

私物ということでまた加工が乱暴で恐縮ですが結束バンドとホットボンドでケーブルの引っ張られ対策をして熱収縮チューブで覆って完了です。

次回に続きます -(4)。

PCスピーカーの「ピー・・」というノイズの原因(2)

前回からの続きです – (2)。

↓まずはケーブルのPC側付近を一度切断してシールド/GND,0Vの接続状態を変えてみます。
PC接続プラグ付近でUSBの0Vと3.5mmプラグのシールド/GNDをくっつけてみます。(後参照用にこれを実験①とします)
接続図1でいうと Gw2 と Ew2 をくっつけた状態です。

これで試してみると、変わらず「ピー」が出ます。そしてなんと3.5mmプラグを外しても「ピー」が出続けています。前回記事で、3.5mmプラグを接続せずUSB電源接続のみでは 「ピー」が出ないというのがこの対策作業のそもそもの発端ですので、この変化は「ピー」の対策のヒントになりそうです。

↓USBの0Vとと3.5mmプラグのシールド/GND接続を元通りにして、今度はPCスピーカー側の基板の音声入力ケーブル接続を変えてみます。

信号線(接続図1の Sw )の影響を分離するためGND線(接続図1の Gw )のみを基板に当てます。
↓AA画像(左側) / BB画像(右側)

AA画像(左側)は元のコネクタ接続位置の裏側端子(接続図1の G3 )に当てた場合で、当然これまで同様「ピー」が出ます。
BB画像(右側)のところ(接続図1の E4 )に当てた場合は 「ピー」が出ません!。

ここで、当たり前なんですが、そもそもスピーカーの音はどんな時に出るのかと考えてみます。ここでは接続図1の S6 – G6 間に交流的な電流がある時 = S6 – G6 間に交流的な電圧差がある時です。アンプ A1 は何を増幅しているのかと考えると、S5 の電圧 ですが、より詳しくいうと G5 を基準電圧とした S5 との電圧差 を増幅しています。S6 – G5 間はスピーカー以外は接続されていないので G6 – G5 間を便宜的にスピーカーの一部とみなすと、G5 – S5 間に信号(交流的な電圧差)がある時、G5 – S6 間にこの信号が増幅された電圧が現れ、スピーカーから音が出るということになります。アンプの入力、出力ともG5の電圧が基準となっています。
G5 – S5 間に「ピー」という交流的な電圧差(信号)があるとき「ピー」が聞こえ、G5 – S5 間に「ピー」という交流的な電圧差(信号)が無いなら「ピー」は出ません。

プリント基板のパターンにも小さいながら電気抵抗があり、電流が流れる2点間には小さいながら電圧差(電圧降下)が発生します。その電流が交流なら交流的な電圧差(信号)となり、「ピー」電流なら「ピー」という電圧差になります。電流が流れていない2点間(途中のどの部分にも電流が流れていない2点間)には、電圧差(電圧降下)は発生しません。

上のAA、BB画像では信号線(Sw)は接続されていない( S3 , S4 には電流が存在しない)ので、S5 の電圧は(アンプの入力電流は非常に小さいので無視すれば) G4、そして G3 の電圧とも同じと考えられます。とすれば、G5 と G3 の間に「ピー」の交流的な電圧差があるのがAA画像(左側)で、無いのがBB画像(右側)ということになります。違いは何なのでしょうか?

BB画像(右側)は Gw を G3 には接続せず E4 に接続した状態です(↓接続図1-2)。G3 – G2 間の接続が無いので( S5 のアンプ入力電流は非常に小さいので無視すれば) E4 – S5 間の経路上には電流が無く、その1点である G3 は E4 と同じ電圧、であれば S5 と E4 も同じ電圧です。
次に、G5 – E4 の間に電流がなければ(無視できるほど小さければ) G5 と E4 の電圧は同じになります。G5 と E4 の電圧が同じ状態で、 S5 と E4 の電圧が同じなら S5 と G5 の電圧は同じであり、つまりスピーカーの音(「ピー」)は出ません。
(この説明では意図的に除外しましたが、G5 – E4 間にはアンプICの5V電源 P5 からの電源電流が流れています。電源に交流的な「ピー」電流があれば G5 と E4 の間に「ピー」という交流的な電圧差が出て、すると G5 と S5 の間にも「ピー」の電圧差が現れてスピーカーの音になります。BB画像(右側)の状態では「ピー」が出ていないので P5 – G5 間(アンプICの5V-0V間) には交流的な「ピー」電流が十分少ないのだろうと思います(アンプICのPSR(電源ノイズ除去機能)によっても抑圧されます))


↓BB画像の接続状態(接続図1-2)

同様に
↓AA画像の接続状態(接続図1-3)

接続図1-2(=BB)では、Ew(0V線) と Gw(音声のGND線) の接続経路として、基板パターンの E4 – G3 がなくなっていることがわかります。前述のとおり、G5 と G3 の間に「ピー」の交流的な電圧差があるのがAA画像(左側)(接続図1-3)で(これも前述ですが)プリント基板のパターンにも小さいながら電気抵抗があり、電流が流れる2点間には小さいながら電圧差(電圧降下)が発生するので、G5 – G3 間の「ピー」の交流的な電圧差は E4 – G3 間に「ピー」電流が存在するために発生していることがわかります。実験①(当ページ内前出)で3.5mmプラグを外しても「ピー」が出ていることからわかるのは、USBプラグをつなぐと Ew には常に「ピー」電流があり、さらに3.5mmプラグをつなぐと(または実験①の接続であっても) Gw にはこの Ew の「ピー」電流が分岐して、詳しくは、 E3 – E2 と G3 – G2 間の各抵抗値の比に応じた「ピー」電流が流れている(だろう)ということです。
接続図1では簡便のため音声は片チャンネルのみ記載していますが、実際はL,Rありますので、実際の Gw , Ew の各線は、Gw: AWG#26程度x2 , Ew: AWG#28程度 と、Gw のほうが Ew より倍以上太く低い抵抗値であり「ピー」電流の多くが Gwに流れていると思われます。
これを増幅するアンプIC A1 TDA2822のゲインはプリセット40dBで、これはゲイン低めのマイクアンプという感じで G5 に対する G3 の「ピー」がマイクレベル位に小さくても十分に増幅できるゲインです。

ところで、E4 – G3 は、基板パターン上でどの程度のものなのでしょうか
↓画像

仕事でこの手の基板の設計をしている僕が見ても、え、これだけ?これだけであんなノイズになるの?という印象です。
そしてこの基板のパターンは、闇雲に回路図の端子を繫いだものではなく、GNDのパターンにアナログ回路設計的な配慮のある(所謂リターンパスを考慮した)設計です。基板パターンに電源整流回路があるのでAC入力の基板を流用しているようで、基板設計時にはこういう使われ方は想定していなかったのではと思います。ともかく、特定の(しかも現在ではありふれた)条件では、この程度のパターンでも不快なレベルのノイズに結びつくという実例として認識を新たにしました。

この接続の解決として、配線を基板に直にはんだ付けせず、元の接続にも戻せる(戻しませんが)ように考えて
↓画像のように加工しました。(緑色の線がGND線接続経路変更の追加ジャンパーです)

さて、これでボリュームを上げてみると・・
減ってはいますが「ピー」がいまだしっかりいます。
ボリューム最小では、かなり小さくなって気にならない程度にはなりましたがまだいます。

次回に続きます -(3)。

PCスピーカーの「ピー・・」というノイズの原因(1)

数年前から個人用パソコンで使っているPCスピーカーは、スピーカーからの直出しコードで音声を3.5mmプラグ、電源をUSBでそれぞれを接続する安価なタイプで、これが買ったときからずっと「・ピー・・ピ・ピー」と不連続なノイズを出しています。USBをPCではなく外部のUSB電源アダプターにつなぐと静かになるのは確認済みでしたが、このスピーカーの使用頻度が低いのでノイズはまあいいかとUSBはPCに繫いで音を出すときだけ電源スイッチを入れてそのまま使っていました。
(↓動画は、少しわかりにくいですがマウスの動きと連動してノイズが変化するのが確認できると思います(音声は聞き取りやすいように後加工で大きくしています。))

先日PC内部のほこりを掃除するために一旦ケーブルを全部外して掃除し、ケーブルを再接続する際、スピーカー接続時にすでにPCの電源を入れていて、ふと、電源用のUSBだけをつないだ場合は「ピー」が出ない(出ているが非常に小さい)ことに気づきました。

ということは、PC側USB電源に多少のノイズが存在したとして、電源ノイズに関してはこのPCスピーカー側電源入力回路との組み合わせで使用上問題ない程度に低減できているということになります。

ここで3.5mmプラグ”も”つなぐと「ピー」が出ます。
PCスピーカーについているボリュームを絞り切っても出ています。ボリュームを上げると「ピー」が気持ち大きくなります。

ボリュームを絞り切っても出ている、ということから、信号線以外の線(言ってしまえばシールド/GND線)にノイズが存在しているだろうということがわかります。PCに直接ヘッドフォンを接続して注意して聞いてみても知覚できるレベルのノイズはありませんので、音声信号と一緒くたになっている信号としてのノイズ(これの場合は外部的な努力では減らしようがありません)は無いあるいは非常に小さいです。

ということで、ノイズがケーブルの接続にまつわるものであればこちらの分野ですので、「ピー」除去の対策をしてみました。
長くなるので記事を数回に分けます。

PCスピーカーを分解して、試しに電源に220uHと100uF(低ESR品)のフィルタをつけてみました。すでにUSB電源接続のみでは「ピー」は出ない(正しくは小さくですが出ている)ことを確認しているので効果は大きくないはずです。結果は若干小さくなった程度でした。
(■注意! USB規格では5V-0V間に取り付けられる容量は見かけ上10uF以下と規定されています。上記は実験として一時的に大きな容量をつなぎましたが、実際このUSBを何度か抜き差ししてみると、となりに刺さっていた外付けUSBハブが気絶しました。USBの5V供給側回路がダメージを受ける場合もありますのでこの実験のような接続は行わないでください。)
画像↓(私物につき加工が乱暴なのはご容赦ください)

アンプICはTDA2822です。データシートを確認すると、ゲインはICのプリセットで40dB、PSRR(電源ノイズ除去性能)は30dB(@100Hz)程度だそうです。

アース線をつけてみました。こういったノイズに対して効果は限定的であることは経験的にも回路技術的にも存じているつもりですが、当ブログ “スタジオマイクケーブル音声回線のシールド接続について(片端を浮かす是非)” でアンバランス接続のノイズ対策についてGND接続強化という部分がありせっかくですので試してみました(正直アンバラノイズに十分な効果があるほどのGND接続強化は物理的な制約と効果に見合うと思えないコストが必要と想像されるので僕は今のところ懐疑的です)。結果は接続する場所で若干差があり↓画像の接続箇所では「ピー」がわずかに減りましたが、筐体のネジなど他のところでは「ピー」がむしろ増えました。

と、ここまでは接続状態を考えずにざっと手を付けられることを闇雲にやってみたのですが、ここからはPCスピーカーの内部アンプ基板の接続を含めた全体の接続状態を考慮しながら作業してみます。


↓接続状態を図にしてみました。(事後的なので図にできています。実際は原因確認作業がある程度進まないと意味のある図にできません)

次回に続きます – (2)。

スタジオマイクケーブル音声回線のシールド接続について(片端を浮かす是非)

興味深いページを見つけました(というかだいぶ以前に見つけていたことを思い出しました)。

T. Sato様のHP内「雑音の低減のための両端でのケーブル・シールドの接続」
by Tony Waldron and Keith Armstrong 翻訳:T. Sato様
http://t-sato.in.coocan.jp/emcj/0205-75-j.html

T. Sato様サイトのこのページが属するブロックのタイトルは”電気製品の EMC/安全適合性”ですが、アナログオーディオ的に興味深い内容があります。

参照ページを乱暴にかいつまんでしまって申し訳ないのですが、

*ピン1問題について
ピン1問題の”ピン1″というのは、XLR3(3ピンキャノン)の1番ピンのことで、XLR入出力の機器について、リヤパネルのXLR座1番ピンと回路GNDとの接続がXLRのピンにはんだ付けされた電線を介してプリント基板上で行われているもの(今どきの製品では見かけませんが)で発生する場合がある問題です(次で合わせて説明)。

*参照ページの表題にもなっているシールドの両端接続について
欧米ではプロオーディオシステムの配線で音声ケーブルのシールド接続の片端を外す(外したりつけたり試す)(ファンタム電源が通らないのでマイク回線は除くと思いますが)らしいと聞いていましたが実際普通に行われているようです。GNDとアースに関することですので、この点で現状まず日本と差があるのが、金属(導電性)筐体の製品は一般にアース端子付きの3ピンコンセントが使われこのアース(接地)接続は義務である点。日本では(水気のある場所で使用するものなどを除く)100V機器はアース接続は義務ではなく現在の国内流通製品はほとんどが2ピンプラグです(プラグにアース端子無し)。日本製国内流通品を使っている分にはコンセントアース端子経由の機器間のGND接続網は発生しません(注1)。…しかし、内線規程など法的なものもアース付き壁コンセントを推奨してきていますので、時間はかかりそうですが日本も3ピン電源プラグを使ったアース接続が普及していくのだろうと思います。日本の場合アース接続方式が欧米と違うそうなのでアース接続普及で欧米とは違う現象が起こるかもしれません…話がそれました。
アース接続は必須という条件下で、シールド接続の片端を外す、というのは、
ピン1問題とも関連しているのですが、音声ケーブルシールドが両端接続されていて、例えばアース端子から音声ケーブルシールドに流れるノイズ電流がある場合に(コンセント端子側アースによる機器間GND接続と、音声シールド接続による機器間GND接続が、両方同時に存在するのでノイズ電流がある場合両方同時に流れることになる)、ノイズ電流がプリント基板の0V(GND)パターンを通して(=敏感な回路の基準電圧をノイズ電流が揺さぶりながら)流れてしまうので、シールド接続を切ればプリント基板上のノイズ電流をなくせる(=ノイズをなくせる)という手法のようです(義務であるコンセントアース接続は切れないので)。→ → いまやこれはノイズ的に良くないやり方でそもそもこの種のノイズ電流の大部分がプリント基板上を流れてしまうような機器の作りの問題(ピン1問題)だと指摘

日本でシールド接続の片端を外すを実施している設備は僕自身は聞いたことがありませんが、シールド接続とは別な話で、グランド・ループを切る、というのはオーディオ的に基本的なテクニックと思っていました。が、高周波のノイズが以前とは比べ物にならないほど増えた現在、アナログオーディオ機器の接続も参照ページにあるように、
*すべてのケーブルシールドは両端接続する(片端接続はシールドが高周波的なアンテナそのものになってしまう)
*シールドは機器、ケーブル、トータルで”隙間なく”行う(現実的には限度ありますが)
*シールド接続(機器間GND接続)のインピーダンスを徹底的に下げる。加えて、繫げられる箇所は繫ぎまくる(ループ面積を小さくするのが目的なので逆の作用がある(繋ぐと大きなループができるような)箇所は繋ぎません)。
・・切るのではなく、徹底的に繫ぐ、というのが方法論になるということのようです(それでも グランド・ループ は小さいほうがいい、ないほうがいい、という点は基本通りです)。

グランドやアースはとにかく繋げ、ひたすら太くしろ、という話で、昭和の時代(ノイズといえばブーンかジーのハムだった時代)に聞いたわけもわからずの力業でノイズ解決(というか問題を薄める)、が戻ってきたみたいで、あれも方法論として正当だったのかなと感じ入る次第です。

アンバランス機器についても触れています。まずバランス化する、それはできないという場合で問題あるならシールド接続を太くする(場合によっては別途太いGND電線を足すとか)…僕の経験として現場でアンバランス機器にノイズがあってラックマウントの場合、ラックから浮かす(ラックとそのアンバラ機器筐体との電気的な接触をなくす)とノイズが大きく改善する(なくなる)のを何度も経験しています。これは、グランド・ループを切る、状態です。アンバラOUTからアンバラINへの接続は本質的に信号とグランド・ループノイズを区別できないので、ノイズが現れやすいのはわかりますが、ピン1問題のような機器側の問題もある気がします。・・今は自分が設備の現場にかかわる機会がないので予想としてといった程度ですが。
*これはアンバランス機器といってもプロオーディオ設備の話です。ご家庭のシンプルなオーディオ配線で問題になることはないと思います。電源が2ピンプラグならなおさら。

当ページの内容に興味を持っていただいた方は、ぜひ参照元を含むT. Sato様のページを読んでください。ノイズに対して具体的な解決の方法論を含めた多くの情報があります。

注1:この場合も万一の感電防止のためにアース接続は可能なら実施すべきです。安全性の観点からは個々の機器でアースに接続するのがベストでしょうが、接続自体難しい製品も多いので、1箇所、例えばラックキャビネットが金属製ならキャビネット本体、木製なら機器固定ラックアングル金具、などシステムのケーブルがGND共通として多く接続されているところまたは多く接続されている機器(パッチ盤はほとんどがケースも各回線も単独に絶縁されているのでここでいう”ケーブルが多く接続”には含まれません)がいいと思います(そう考えるとラック実装でラックと機器がマウント金具のネジ固定でしっかり電気的に接続される必要があるということになりますが、ラックや機器は大抵、塗装だったりアルマイトだったりの絶縁被膜があるのでしっかり電気的に接続というのは意識しないとなかなか難しいかもしれません)。この接続で感電に対する安全性は高まりますが、もし不幸にもこのシステム内で漏電が発生した場合に、漏電電流がアース接続点までの間にあるシステムのケーブルと接続機器を通過するので、通過経路上にある機器が運悪く故障する可能性があります(くり返しますが漏電が発生した場合です)。その前に漏電ブレーカーが遮断してくれると思いますが、この点一応気に留めておいてください。
漏電ブレーカーと聞いてああそういえばと思った方は漏電ブレーカーの動作テストなどについても調べてみてください。