PCスピーカーの「ピー・・」というノイズの原因(4)

前回からの続きです – (4)。

↓CMC(コモンモードチョーク)を取り付けた現在の接続図(接続図1b)

CMCの効果で「ピー」はかなり小さくなりました。このままでも使用には問題ないレベルと思います。ですが、それまで「ピー」に紛れて聞こえていなかったアンプのホワイトノイズが「ピー」が小さくなったことで実はけっこう大きかったんだなと感じ、気になってきました。

ホワイトノイズはボリュームを絞っても出ているので、ボリューム以降の部分、PCスピーカー内のアンプのゲイン(プリセット40dB)が高すぎるために大きく出ていると思われます。ボリューム部分は 50kΩBカーブのボリュームにオーディオカーブ補正のためと大きすぎるアンプゲインに対応するためのアッテネーター(約24dB)を兼ねた抵抗がついています。このアッテネーターを無くしてその分アンプゲインを下げれば現状のスピーカー音量程度のままホワイトノイズを低減できます。

画像↓ボリューム部分の加工(私物につき加工が乱暴なのはご容赦ください。・・ここは特に乱暴ですね)。

似たようなアンプICのNJM2073のデータシートを参考に外部NFBを追加してアンプゲインを下げます(私物につき加工が乱暴なのはご容赦ください)。画像↓

Rf:4.7k / Rs:820 でゲイン約16dBになり、アッテネーターをなくした分と相殺できましたが、(違う型番なので条件は異なるとはいえ)このデータシート記載での安定動作するゲイン低減の最大量を大分超えてしまっているので、動作が不安定であれば対策をする必要があります。オシロスコープをつないで動作状態を確認したところ、オシレーター1k~2MHzスイープでピークなく穏やかにゲインが下がり、出力クリップ時のリンギングもないので、(私物ということで)特に対策はしなくてOKとしました。

結果、ホワイトノイズは聞こえなくなりました。小さく残っていた「ピー」もアンプゲインを下げた分さらに小さくなりました。それでも完全沈黙とはいかずスピーカーに耳をくっつけると小さく「ピー」と聞こえますが、使用状態ではPCのファンの音も加わるのでスピーカーからの音として聞き取れるノイズはなくなりました。パッシブ部品でのローコストな対策(ICなどを使わない対策)としてはこのあたりが限度と思います。

これ以上の対策は、(通販サイトのレビューなどでもすでによく書かれている方法ですが)PCとは絶縁された別なUSB5V電源を用意するというのが最も効果が大きい正攻法ということになります。この差が現れるのは、PCのUSBはノイズが多く外部アダプターはノイズが少ないから、ということではありません。電源0Vが絶縁されているからです。↓接続図1(=対策加工前の図)で少しご説明すると、外部アダプター使用の場合は接続図1でいうところの E1 – G1 接続が存在しません(絶縁されている)。このため(ノイズも含まれているかもしれない)電源電流の経路が P2 – P3 と E3 – E2 (= 5V – 0V) の線間に逃げ場なく閉じ込められていて、 G3 – G2 (接続図1) 側には 5V – 0V 間に存在している(かもしれない)ノイズ電流が流れ込まない → PC側GNDとPCスピーカー側GNDの間にノイズ電圧が発生しない、となります。

参考用(再) 接続図1(=対策加工前の図)

単に結果と方法をご紹介するのではなく、身近な題材でノイズの原因と対策の過程をお伝えできれば面白いのではないかと記事にしてみましたが、わかりやすいものにはならなかったので反省。


PCスピーカーの「ピー・・」というノイズの原因(3)

前回からの続きです – (3)。

前回の加工を反映した接続図
接続図1a

ボリューム最小では、かなり小さくなって気にならない程度になりましたが、ボリュームを上げるに伴って「ピー」が大きくなる。これは、接続図1aでは、G4 – S4 間に 「ピー」電圧があり、それがボリュームで増減されている 。ここからたどって、G4電圧 = E4電圧 (≒G5電圧) , S4電圧 = S3電圧(とします) ですので、 E4 と S3 の間に 「ピー」電圧があるということです。S3 – S2 間には他に接続が無いのでここでは S2電圧 = S3電圧 とします(実際はG4やS5から交流的な電流が流れ込んでいる場合もありこれを考慮しなければならないこともありますが、ここでは無いものとします)。
PC内部の G2 , G1 , E1 , E2 間の抵抗や電流がどうなっているかはわかりませんが今便宜的に G2 – G1 – E1 – E2 間は非常に抵抗が小さくこれらの間に電圧差は無いものと仮定します(実際はあるかもしれません。後ほど)。
PC側のアンプA0 の出力である S2電圧 は G1電圧 を基準としています。E4 – G2 間と、加えてこれと並列に接続されている E4 – E2 間の両方に「ピー」電流が流れているので、 G1(=G2) と E4 の間には「ピー」電圧(電流による電圧降下)があります。S3(=S2) の電圧基準は G1(=G2) ですので、ボリュームを上げると出てくる「ピー」は、E4 – G2 および E4 – E2 間に流れる「ピー」電流によって作り出されていると考えられます。
DC電源0Vと音声GNDが、PC側で E2 と G2 、PCスピーカー側で E3 の1ヶ所でまとめられて(配線加工前でも E4 と G3 として)それぞれくっついている以上、「ピー」電流は G2 , E2 に対して(=G1 に対して) E4 の「ピー」電圧(電流による電圧降下)を作ってしまいます。(この、電源0Vと信号GNDの関係は、機器設計においても高性能化に際してノイズやクロストークについての重要な問題です)

電源のノイズといった場面で威力を発揮してくれそうなのがコモンモードチョーク(以下、CMCと表記)です(CMCの働きについては各メーカーサイトで詳しく説明されていますのでそちらをご参考ください)。CMCはコモンモードノイズ電流を阻止するための部品ですが、有効周波数範囲のディファレンシャルモード(ノーマルモード)電流を最大化する働きがあります。但し、CMC、特に電源用CMCは直流を含めてディファレンシャルモード電流は対称な電流を扱う(なので最大化も何も常に最大です)という前提があり、ここが定常的に非対称な電流となるのはイレギュラーな使い方で、この場合のスペックもデータシート記載がありません。今回は 0V側 でCMCと並列に接続経路が存在するので直流についてCMCの電流は非対称になります。
CMCの記載を加えた下記接続図1bから、CMCの直流抵抗は基板パターンやケーブルの直流抵抗より大きいので、0Vの直流電流については、E3 – E2 電流より E3 – G2 電流のほうが大きくなるだろうことがわかります。つまり、CMCの 5V と 0V の直流電流は大分非対称になります。
接続図1b

CMCの接続を試す前に、外部の実験用電源から5Vを供給してPCにはUSBの0Vのみと3.5mmプラグを接続してみます。この実験でUSBの5V電源のみがノイズ源なのかを確認します。もっと前にやるべき実験なのですが説明の都合でここになってしまいました。↓画像の接続でワニ口クリップから外部5Vを供給します。(CMC接続の加工途中で接続を変更して実験しているためCMCの端子をハンダターミナルとしてだけ利用しています。CMCはこの実験の動作には影響していません)

外部5Vを供給します。5Vの消費電流の直流分は 12mAでした。次にUSB,3.5mmプラグを接続します。USBの0Vまたは3.5mmプラグどちらかを繫いだ場合は静かですが、USBの0Vと3.5mmプラグ両方を繋ぐと「ピー」が出ました。USBの5Vは繋いでいないのにです。USBの0Vと3.5mmプラグのGNDの間に「ピー」電流が流れているということです。前述の PC内部のGNDと0Vに電圧差は無いと仮定・・というわけにはいきませんでした。これは、何モードのノイズというのか、PC側マザーボードの単純でない原因によって現れるものだと思います(ここ(PC側)に手をつけたくありません)。
CMCはディファレンシャルモード電流以外の電流に効果(対称でない電流を阻止する)があるのでここで確認された 0V – GND間の 「ピー」電流にも効果があるのではと思います。

今回使うCMCは50円で入手した電源用の約40mH/0.6Aとインダクタンスの大きなものです(このPCスピーカーは数年前に確か500円位で入手した物(新品です。当時は安かった)なので追加対策部品が数百円レベルになるともうコスト的なバランスが悪いのでその点を気にしながら進めています)。CMCの二次側に、気休めに0.1uFのコンデンサをつけていますが無くても効果は変わりません。

「ピー」ノイズの大幅な改善が得られました。条件が限られると思いますが、今回は非対称な直流で磁気飽和せずに効果を発揮してくれました。これなら前回記事の接続図1aとなる配線接続変更はしなくてもCMC追加だけでこの状態になったのではと思います。
動作としては、「ピー」電流(の大部分)がCMCによって強制的に対称な電流として 5V , 0V の2線間とPCスピーカー側の10uF(コンデンサー)で折り返す経路に閉じ込められた格好になり、接続図1bの G2 – E3 間(3.5mmプラグのGNDとPCスピーカーのGND間)には「ピー」電流が(ほとんど)流れないため、G2(=G1) に対して E3(=G3=G4) には「ピー」電圧が(ほとんど)発生しません。よって E4 – S4(からボリュームを経由した S5) 間、それがアンプA1を通った S6 – E4 間にも「ピー」電圧が(ほとんど)発生しません。( ここの文章のところどころに出てくる”(ほとんど)”で「ピー」が完全に沈黙したわけではないことをご想像いただけると思います)
しかし「ピー」 はかなり小さくなったのですが今度は別な気になることが出てきました・・

私物ということでまた加工が乱暴で恐縮ですが結束バンドとホットボンドでケーブルの引っ張られ対策をして熱収縮チューブで覆って完了です。

次回に続きます -(4)。

PCスピーカーの「ピー・・」というノイズの原因(2)

前回からの続きです – (2)。

↓まずはケーブルのPC側付近を一度切断してシールド/GND,0Vの接続状態を変えてみます。
PC接続プラグ付近でUSBの0Vと3.5mmプラグのシールド/GNDをくっつけてみます。(後参照用にこれを実験①とします)
接続図1でいうと Gw2 と Ew2 をくっつけた状態です。

これで試してみると、変わらず「ピー」が出ます。そしてなんと3.5mmプラグを外しても「ピー」が出続けています。前回記事で、3.5mmプラグを接続せずUSB電源接続のみでは 「ピー」が出ないというのがこの対策作業のそもそもの発端ですので、この変化は「ピー」の対策のヒントになりそうです。

↓USBの0Vとと3.5mmプラグのシールド/GND接続を元通りにして、今度はPCスピーカー側の基板の音声入力ケーブル接続を変えてみます。

信号線(接続図1の Sw )の影響を分離するためGND線(接続図1の Gw )のみを基板に当てます。
↓AA画像(左側) / BB画像(右側)

AA画像(左側)は元のコネクタ接続位置の裏側端子(接続図1の G3 )に当てた場合で、当然これまで同様「ピー」が出ます。
BB画像(右側)のところ(接続図1の E4 )に当てた場合は 「ピー」が出ません!。

ここで、当たり前なんですが、そもそもスピーカーの音はどんな時に出るのかと考えてみます。ここでは接続図1の S6 – G6 間に交流的な電流がある時 = S6 – G6 間に交流的な電圧差がある時です。アンプ A1 は何を増幅しているのかと考えると、S5 の電圧 ですが、より詳しくいうと G5 を基準電圧とした S5 との電圧差 を増幅しています。S6 – G5 間はスピーカー以外は接続されていないので G6 – G5 間を便宜的にスピーカーの一部とみなすと、G5 – S5 間に信号(交流的な電圧差)がある時、G5 – S6 間にこの信号が増幅された電圧が現れ、スピーカーから音が出るということになります。アンプの入力、出力ともG5の電圧が基準となっています。
G5 – S5 間に「ピー」という交流的な電圧差(信号)があるとき「ピー」が聞こえ、G5 – S5 間に「ピー」という交流的な電圧差(信号)が無いなら「ピー」は出ません。

プリント基板のパターンにも小さいながら電気抵抗があり、電流が流れる2点間には小さいながら電圧差(電圧降下)が発生します。その電流が交流なら交流的な電圧差(信号)となり、「ピー」電流なら「ピー」という電圧差になります。電流が流れていない2点間(途中のどの部分にも電流が流れていない2点間)には、電圧差(電圧降下)は発生しません。

上のAA、BB画像では信号線(Sw)は接続されていない( S3 , S4 には電流が存在しない)ので、S5 の電圧は(アンプの入力電流は非常に小さいので無視すれば) G4、そして G3 の電圧とも同じと考えられます。とすれば、G5 と G3 の間に「ピー」の交流的な電圧差があるのがAA画像(左側)で、無いのがBB画像(右側)ということになります。違いは何なのでしょうか?

BB画像(右側)は Gw を G3 には接続せず E4 に接続した状態です(↓接続図1-2)。G3 – G2 間の接続が無いので( S5 のアンプ入力電流は非常に小さいので無視すれば) E4 – S5 間の経路上には電流が無く、その1点である G3 は E4 と同じ電圧、であれば S5 と E4 も同じ電圧です。
次に、G5 – E4 の間に電流がなければ(無視できるほど小さければ) G5 と E4 の電圧は同じになります。G5 と E4 の電圧が同じ状態で、 S5 と E4 の電圧が同じなら S5 と G5 の電圧は同じであり、つまりスピーカーの音(「ピー」)は出ません。
(この説明では意図的に除外しましたが、G5 – E4 間にはアンプICの5V電源 P5 からの電源電流が流れています。電源に交流的な「ピー」電流があれば G5 と E4 の間に「ピー」という交流的な電圧差が出て、すると G5 と S5 の間にも「ピー」の電圧差が現れてスピーカーの音になります。BB画像(右側)の状態では「ピー」が出ていないので P5 – G5 間(アンプICの5V-0V間) には交流的な「ピー」電流が十分少ないのだろうと思います(アンプICのPSR(電源ノイズ除去機能)によっても抑圧されます))


↓BB画像の接続状態(接続図1-2)

同様に
↓AA画像の接続状態(接続図1-3)

接続図1-2(=BB)では、Ew(0V線) と Gw(音声のGND線) の接続経路として、基板パターンの E4 – G3 がなくなっていることがわかります。前述のとおり、G5 と G3 の間に「ピー」の交流的な電圧差があるのがAA画像(左側)(接続図1-3)で(これも前述ですが)プリント基板のパターンにも小さいながら電気抵抗があり、電流が流れる2点間には小さいながら電圧差(電圧降下)が発生するので、G5 – G3 間の「ピー」の交流的な電圧差は E4 – G3 間に「ピー」電流が存在するために発生していることがわかります。実験①(当ページ内前出)で3.5mmプラグを外しても「ピー」が出ていることからわかるのは、USBプラグをつなぐと Ew には常に「ピー」電流があり、さらに3.5mmプラグをつなぐと(または実験①の接続であっても) Gw にはこの Ew の「ピー」電流が分岐して、詳しくは、 E3 – E2 と G3 – G2 間の各抵抗値の比に応じた「ピー」電流が流れている(だろう)ということです。
接続図1では簡便のため音声は片チャンネルのみ記載していますが、実際はL,Rありますので、実際の Gw , Ew の各線は、Gw: AWG#26程度x2 , Ew: AWG#28程度 と、Gw のほうが Ew より倍以上太く低い抵抗値であり「ピー」電流の多くが Gwに流れていると思われます。
これを増幅するアンプIC A1 TDA2822のゲインはプリセット40dBで、これはゲイン低めのマイクアンプという感じで G5 に対する G3 の「ピー」がマイクレベル位に小さくても十分に増幅できるゲインです。

ところで、E4 – G3 は、基板パターン上でどの程度のものなのでしょうか
↓画像

仕事でこの手の基板の設計をしている僕が見ても、え、これだけ?これだけであんなノイズになるの?という印象です。
そしてこの基板のパターンは、闇雲に回路図の端子を繫いだものではなく、GNDのパターンにアナログ回路設計的な配慮のある(所謂リターンパスを考慮した)設計です。基板パターンに電源整流回路があるのでAC入力の基板を流用しているようで、基板設計時にはこういう使われ方は想定していなかったのではと思います。ともかく、特定の(しかも現在ではありふれた)条件では、この程度のパターンでも不快なレベルのノイズに結びつくという実例として認識を新たにしました。

この接続の解決として、配線を基板に直にはんだ付けせず、元の接続にも戻せる(戻しませんが)ように考えて
↓画像のように加工しました。(緑色の線がGND線接続経路変更の追加ジャンパーです)

さて、これでボリュームを上げてみると・・
減ってはいますが「ピー」がいまだしっかりいます。
ボリューム最小では、かなり小さくなって気にならない程度にはなりましたがまだいます。

次回に続きます -(3)。

PCスピーカーの「ピー・・」というノイズの原因(1)

数年前から個人用パソコンで使っているPCスピーカーは、スピーカーからの直出しコードで音声を3.5mmプラグ、電源をUSBでそれぞれを接続する安価なタイプで、これが買ったときからずっと「・ピー・・ピ・ピー」と不連続なノイズを出しています。USBをPCではなく外部のUSB電源アダプターにつなぐと静かになるのは確認済みでしたが、このスピーカーの使用頻度が低いのでノイズはまあいいかとUSBはPCに繫いで音を出すときだけ電源スイッチを入れてそのまま使っていました。
(↓動画は、少しわかりにくいですがマウスの動きと連動してノイズが変化するのが確認できると思います(音声は聞き取りやすいように後加工で大きくしています。))

先日PC内部のほこりを掃除するために一旦ケーブルを全部外して掃除し、ケーブルを再接続する際、スピーカー接続時にすでにPCの電源を入れていて、ふと、電源用のUSBだけをつないだ場合は「ピー」が出ない(出ているが非常に小さい)ことに気づきました。

ということは、PC側USB電源に多少のノイズが存在したとして、電源ノイズに関してはこのPCスピーカー側電源入力回路との組み合わせで使用上問題ない程度に低減できているということになります。

ここで3.5mmプラグ”も”つなぐと「ピー」が出ます。
PCスピーカーについているボリュームを絞り切っても出ています。ボリュームを上げると「ピー」が気持ち大きくなります。

ボリュームを絞り切っても出ている、ということから、信号線以外の線(言ってしまえばシールド/GND線)にノイズが存在しているだろうということがわかります。PCに直接ヘッドフォンを接続して注意して聞いてみても知覚できるレベルのノイズはありませんので、音声信号と一緒くたになっている信号としてのノイズ(これの場合は外部的な努力では減らしようがありません)は無いあるいは非常に小さいです。

ということで、ノイズがケーブルの接続にまつわるものであればこちらの分野ですので、「ピー」除去の対策をしてみました。
長くなるので記事を数回に分けます。

PCスピーカーを分解して、試しに電源に220uHと100uF(低ESR品)のフィルタをつけてみました。すでにUSB電源接続のみでは「ピー」は出ない(正しくは小さくですが出ている)ことを確認しているので効果は大きくないはずです。結果は若干小さくなった程度でした。
(■注意! USB規格では5V-0V間に取り付けられる容量は見かけ上10uF以下と規定されています。上記は実験として一時的に大きな容量をつなぎましたが、実際このUSBを何度か抜き差ししてみると、となりに刺さっていた外付けUSBハブが気絶しました。USBの5V供給側回路がダメージを受ける場合もありますのでこの実験のような接続は行わないでください。)
画像↓(私物につき加工が乱暴なのはご容赦ください)

アンプICはTDA2822です。データシートを確認すると、ゲインはICのプリセットで40dB、PSRR(電源ノイズ除去性能)は30dB(@100Hz)程度だそうです。

アース線をつけてみました。こういったノイズに対して効果は限定的であることは経験的にも回路技術的にも存じているつもりですが、当ブログ “スタジオマイクケーブル音声回線のシールド接続について(片端を浮かす是非)” でアンバランス接続のノイズ対策についてGND接続強化という部分がありせっかくですので試してみました(正直アンバラノイズに十分な効果があるほどのGND接続強化は物理的な制約と効果に見合うと思えないコストが必要と想像されるので僕は今のところ懐疑的です)。結果は接続する場所で若干差があり↓画像の接続箇所では「ピー」がわずかに減りましたが、筐体のネジなど他のところでは「ピー」がむしろ増えました。

と、ここまでは接続状態を考えずにざっと手を付けられることを闇雲にやってみたのですが、ここからはPCスピーカーの内部アンプ基板の接続を含めた全体の接続状態を考慮しながら作業してみます。


↓接続状態を図にしてみました。(事後的なので図にできています。実際は原因確認作業がある程度進まないと意味のある図にできません)

次回に続きます – (2)。

Dsubコネクターのピン。切削ピンとプレスピンがあります。

Dsubコネクターのピン。切削ピンとプレスピンがあります。
ご存じの方も多いと思います。ご存じの方にはこのページに大した情報はありませんが、プロオーディオの方には最後の注釈部分だけ目を通していただくとちょっとだけ面白いかもしれません。

Dsubコネクターの流通から見て僕は一ユーザーにすぎませんのでこの記事の内容については配線施工や機器設計の仕事で扱ってきた経験的な知識とコネクタメーカーのカタログ、データシートからの情報です。現場的なざっくりとした情報とみてください。

Dsubコネクターはプロオーディオでは8CHのTASCAMピン配列(注1)のDsub25や家庭内でもパソコンについている身近なコネクターです。いや、身近になりました。昭和から平成初期くらいまでは民生用という印象はなく値段もそれなりに高価なものでした。その後の特にパソコンの普及による量産効果はすさまじく、非常に安価に入手できるコネクターになりました。安価なものは例外なくプレスピンです。昭和時代に秋葉原店頭にあったそれなりに高価なDsubコネクターは切削ピンでした。当時からプレスピンの物も存在したと思いますが僕が覗いていた店では扱っていなかっただけかもしれません。

Dsubの切削ピンとプレスピンはオスなら勘合面で見れば区別できます。メスは勘合面からは区別がつきにくいですが、切削ピンはピンの穴からピンが比較的見えやすく見えているピンの角度がそろっていません。はんだ付け側から見ればオスもメスも区別がつきます。

↓切削ピンのDsub

↓プレスピンのDsub

切削ピンは文字通り削り出して作ったピンです。マシンコンタクトとも呼ばれます。材料も手間もかかって高コストなのが想像できます。

プレスピンは薄板をプレス機で打ち抜いた上、さらにピンの形に丸めて成形したピンです。スタンプコンタクト(スタンプピン)とも呼ばれます。

主な違いは最大電流、ピンの機械的な強度、それと(これはメーカーカタログ記載は見たことありませんが)ピンを保持する絶縁材とのクリアランスです。

両方に共通する仕様で、金メッキ厚みが数種類あります。抜き差し回数の耐久性の意味合いです。一般的な製品にはフラッシュという薄いタイプが使われます。

スペックとして標準的な最大電流はプレスピンが3A、切削ピンが5Aです。これは放熱(熱伝達)性能に由来すると思います。接触抵抗スペックはどちらも<20mΩの記載が多く、ラインレベルアナログ音声信号、データ伝送で使用する分には電気的な差はありません。(心情的には切削ピンのほうがピン表面がピカピカなのでよさそうな気がするとは思います)

ピンの機械的な強度については特にオスピンは勘合面に突起物が当たるなどのピンを曲げるような力が加わる場面があり得ますが、実際力が加わるとプレスピンも切削ピンも曲がります。ケーブル接続時に「なんか入らないな」と勘合面を覗き込んだらピンの曲がりを発見した、といった感じで曲がりはいつ起こったかわからず大抵事後に発見します。コネクター接続時なのでその場はしのぐために細いマイナスドライバー等でピンを曲げ戻した時、切削ピンは大方戻りますが、プレスピンは曲がりが大きいと根元で折れてしまうことがあります(悲劇的です)。もちろんこの場面を乗り切った場合も、その後状態を十分点検して、(切削ピンの場合そのままでも問題ないことは多いですが)コネクターを付け替えるのが賢明です(が、機器側の場合は簡単ではないことが多いです)。経験的には、機械的な強度(というより曲げ性?)の差を感じる場面はこのくらいで、パッチコードとか持ち回り機材ケーブル用であれば切削ピンのほうがそういう事故の保険になるかもしれませんが、固定的な使用で切削ピンとプレスピンを性能的に意識することはまずありません。

ピンを保持する絶縁材とのクリアランスについては、切削ピンはクリアランスが大きく、コネクター部品単体を振るとカチャカチャ音がします。プレスピンのほうは音はせずピンが動きません。大きなクリアランスには何かコネクターの設計的な意味合いがあるのでしょうが、このクリアランスに関してプレスピンと切削ピンのオスメスの組合せで気に留めておいてほしいものがあります。
切削ピンのメスのケーブルプラグとプレスピンのオス(プラグまたは座)の組合せだと勘合時にピンの何かが当たって差し込めないことが稀にあります。僕は現場で数回経験しました。その後実験としてこの様子を再現して原因を確認してみました。勘合中の該当部分は実際には見えないので考察といったところですが以下その考察です。
–狭いプラグカバー内にケーブル端末処理部分を詰め込んで収めると個々の電線が個々のピンを勘合面とは別なバラバラな方向に向けようとする力が強くかかった状態で組み立てられてしまうことがあります。電線が太い場合は特に。この場合切削ピンはクリアランスが大きいためメスの場合ピン自体の先端が勘合面のピン穴から見て(メスピン先端フレアの端断面が見えているところまで)ずれた状態になっていることがあります。ここにプレスオスピンが入るとプレスオスピン先端の一部が、ずれている切削メスピン先端に引っ掛かかることがあります。プレスオスピンの先端にはプレス整形合わせ面の凹凸がありここが引っ掛かるようです。入口で引っ掛かるので奥まで入りません。似た状況ですが切削オスピンが入る場合は切削オスピンの先端は滑らかなので引っ掛かりは起きないのとオス側もクリアランスが大きいためピンの位置が収まりのいいところまで逃げてくれます。切削ピンのメスでもプラグカバー内に余裕があればまず起きないです。今どきの機器はほとんどがプレスピンですので、プラグが切削ピンのメスの場合は(めったにないとは思いますが)このことを気に留めておいてください。

そんなこともあるので、どの組み合わせでも勘合挿入時は初めからグッと力をかけることは避け、若干ゆすりながらそろっと入れるのが安全です。抜くときは当たり前なんですが真っすぐ抜く。というのは、固定ネジを片側だけ緩めきれずネジ掛かりが残った状態で引っ張ると意図せず大きく斜めにこじる角度になりオスピンが曲がるあるいは最悪Dsubコネクターを破損する危険がありますので、先に固定ネジを両側十分緩めるわけですが、もし何かある場合でも真っすぐ抜くつもりでいれば斜めになりそうなところで手を止められます。

ということで高価=高級品として何でも切削ピンのほうがいいだろう、とはせずに、適材適所を心掛けたいです。

注1: TASCAMピン配列はAES59-2012として標準化されていますが僕的にはルーツであるTASCAMと呼び続けたい。

余談ですが、TASCAMピン配列は、なぜ1番ピンがCH1ではなくCH8のHOTなのかという疑問について、経緯を想像しています(私見です)。
僕がこのピン配を初めて見たのがTASCAMの1Uバンタムパッチ盤PB-664で、DA-88登場より前です。内部は基板付けジャックユニット8ヶ単位とDsub25メスコネクターの基板アセンブリが上下段にそれぞれ入っています。

バンタムパッチ盤は前(ジャック側)から見て銘板がジャックの上側にあるので下段ジャックユニットは1Uサイズ内ではかなり下に位置することになります。下段ジャックのさらに下に基板を配置するスペースは取れないため基板をジャックの上側に配置するレイアウトになります。同じ基板についている背面側のDsub25メスコネクターも上下逆になります。

そうすると前(ジャック側)から見た位置でいうと背面Dsub25メスの1番ピンはジャックユニット並びの右側つまりCH8側になります。敏感な信号も通るのでジャックとコネクター間の基板配線パターンはできるだけ短く真っすぐにしたい、そうするとDsub25メスの1番ピンはそのままCH8側になります(ここで、 Dsub25オス座にして1番ピンがCH1という選択肢もありますが・・色々な理由が考えられますがこの場合やはりメスが選択されると思います)。

上下段やIN,OUTでオスメスを使い分けたかったとしても基板配線を短く真っすぐにした場合ピン配がオスメスで同じにならないので使い分けはできずDsub25はすべてメスになる。TASCAMピン配列がIN/OUTとも機器側がメスなのもこれに由来するのだろうと思っています。
TASCAMピン配列が普及したのは名機DA-88のヒットからですが、TASCAMにもしPB-664の先例がなくDA-88にDsub25が採用されていれば1番ピンはCH1のHOTになっていただろうと思います…いやむしろ先例なければDsub25はなかったかもしれません。当時二分する勢力だったADATのELCO56などもありましたから。
もしこんな経緯だとして、Dsub25採用で1番ピンがCH8のHOTなのは成り行きとして受け入れられるものに思えます。
と、これは私見ですので、真相は当時のTASCAMの関係者の方にお聞きしなければわかりません。

* 内部基板を含め画像のパッチ盤はPB-664ではなく40列80穴の704です。32列のPB-664は当初32CHコンソ-ルM600用のパッチ盤として設定されたものだろうと思いますが、704は40CHコンソ-ルM700用に配置を詰めて8CH1ユニット分を加えた40列になっています(704はM700専用でカタログ品ではなかったかもしれません)(画像掲載品はパネル色がグレーですが本来は黒色です)。ちなみに、このパッチ盤についているDsubのロックネジはM2.6でした(基板付けDsub本体側のロックポスト受けめねじもM2.6)。この製品に限らないですが当時の海外流通分は#4-40とかいうことはあるのでしょうか、海外ではM2.6ネジ付きのカバーは入手性悪いでしょうから。この辺の事情は存じませんが。現在は国内流通機器のDsubネジも#4-40が普通になってきました。所謂グローバル化の現れなんでしょうけど、パソコン普及によるインチねじの浸透も大きいと思います。

TEACTASCAM は、ティアック株式会社の登録商標です。

ルーペ付きアームライトが点かなくなりました → 修理しました

お気に入りのルーペ付きアームライトが点かなくなりました。LED光の色味がよくて気に入っています。L-ZOOM ルーペ付LEDアームライト 07-6381(オーム電機) 。モデルチェンジして首部分の可動機構が変わり、僕の場合だとちょうどいいセッティングにならないので2022年現行品は使用候補になりません。交換候補を探しておかないと

安易に同機種を買いなおすことができないので、修理しました。
修理は既にざっと終わってしまったのですが、何か加工の参考になるかと(AC100Vケーブル部分は問題が起こると危険ですので安易に手を付けるべきではありませんが)思ったので、この修理について掲載してみます。(写真は再分解して撮りました。ご苦労)

初めは不定期に消えるような症状だったので回路かスイッチの接触かと思って叩いたりしていたのですが、暫く確認しているとヘッド部を下げると消える、上げると点くというのがわかりました。なら関節可動部分の問題=ケーブル断線だろうということで気が楽になりました。(写真は修理後なので下げても点いています)

アーム部を分解。

アームパイプのカバーはカバー両端内側の爪2ヶ所(だけ)でアームパイプに嵌っています。カバーの端をつかんで引っ張ると外れます。固いです。

基部のコードブッシュをコンセントプラグ付近まで移動して、首部分からアーム内部にあたる分のケーブルを引き出します。(写真は修理済みなので前腕部分の外被は取り去ってあります)

この状態でコンセントを繫いでスイッチを入れ各関節付近を中心にそっとケーブルの曲げ伸ばしをして点滅を確認、断線箇所を特定します。(事後なのでここは写真がありません)

断線はケーブルがひじ部分のここに当たっている箇所と当たりがついたのでケーブルを切開して外被を部分的に取り去ります。白電線が断線していました。(肝心の箇所ですが事後なのでケーブルの写真がありません)(*外被の切開加工はこのページの後のほうで触れてみます)

Bスリーブ(突き合わせ端子)の手持ちが無いので端子を切断加工して作ったスリーブで接続しました。はんだ接続のほうが仕上がりが細くて良かったかもしれません。
(事後で現品写真がないので写真用に端切れでサンプルを作成。ご苦労)

芯線を重ね合わせているので断線部分だけ修理するとその分短かくなって引っ張られるので、白黒両方切断して繫ぎなおしました。今回は、アームパイプ内に収めるので接続箇所が太くならないように接続位置をずらしました。接続箇所の絶縁は擦れなどからの物理的な強度も十分確保します。今回はガラスチューブと熱収縮チューブを併用しました。アームを動かしたときケーブルがアームパイプ内で(若干ですが)スライドしているので妨げにならないように接続箇所より先の外被は全部取り去りました。電線被覆および接続部の絶縁部分がパイプ内壁とのスレで破れると危険なのでスパイラルチューブで保護しました。

故障原因としては、特にアームひじ関節部分でこのケーブルに対してこの曲げRで繰り返しの曲げはちょっと苦しいのかな、ということでしょうか。ひじ部カバーでケーブルの逃げが制限されているのもつらいところ。現行品がACアダプター仕様なのはアーム内のケーブル選択がより自由になりますので、コストとの兼ね合いだけではなくてこういう問題の改善も含まれているのかもしれません。

外被(ジャケット)の加工(皮むき)
仕事でケーブルを扱っている方には日常のことですので、ここもホビーの方向けのお話になります。
これに限らないのですが、ケーブル外被(ジャケット)を切るときに重要なのは内部電線の被覆にキズを付けないという点です。
正直こればかりは手の感覚なので数をこなさないと身につかないところなのですが、コツとしては、ケーブルを曲げながら刃を当てて(のこぎりのようには動かさずに)当てる力加減で、切れてくる、というか曲げのせいで外被が引っ張られているので刃のキズから裂けていくような感じです。最初の裂け目が貫通したら曲げ角度をずらしながら刃を当てて裂け目を伸ばしていきます。
縦方向の切開は曲げられないのでこちらは刃を当てるのではなくて浅めに切ります。切りキズの端からニッパー等で掴んで裂きます。

ケーブル断線の修理でやたら長い記事になりました。

電子バランス入力回路の種類

アナログオーディオラインレベルの電子バランス入力回路。代表的なものいくつかについて、入力インピーダンスを中心に再確認してみます。

回路例の定数は各回路共ゲイン1倍として記載しています。

[1] 一番見る機会の多いオペアンプの差動入力基本の回路

入力インピーダンスは

[1-1]*アンバランス出力を繫ぐ場合はHOT/COLDどちらかに信号を接続します。通常はHOTに信号、COLD側はGNDに接続します(未接続にするとゲインが6dB下がってしまいます)。[1]の定数だと入力インピーダンスは20kΩ、[1a]の定数だと入力インピーダンスは10kΩ。
COLD側に信号を接続する場合はHOT側はGNDに接続します。[1]の定数だと入力インピーダンスは10kΩ。[1a]の定数だと入力インピーダンスは15kΩ。
COLD(またはHOT)-GND接続は必ずアンバランス出力端で行い、以降バランスで配線します。こうするとバランス接続同様の同相ノイズキャンセル性能が得られます。
GND接続側の入力インピーダンスはここでは割愛します。

[1-2]*真の電子バランス出力(*1)を繫ぐ場合、
[1]の定数だと入力インピーダンスは HOT側:20kΩ / COLD側:≒6.67kΩ(HOT電圧=-COLD電圧の時)。
[1a]の定数では、入力インピーダンスは HOT側:10kΩ / COLD側:10kΩ(HOT電圧=-COLD電圧の時)。

[1-3]*サーボバランス出力(*2)を繫ぐ場合は、[1]の定数では前出[1-2]のようにHOT/COLDの入力インピーダンスが違うのでサーボバランス出力のサーボ機能が働きHOT/COLDには電圧差があります。サーボバランス出力はHOT/COLDの各負荷が非対称な場合シンプルではない電圧配分比率になります(当ブログページ参照「バランス出力IC(DRV134,SSM2142)-アンバランス入力へ接続時の…」*トランス出力と違いHOT/COLDの電流は対称にはなりません)。大雑把には、HOT/COLDは30~40%程度の電圧差となります。入力インピーダンスは HOT側:20kΩ / COLD側:約6kΩ(これは接続されるサーボバランス出力によって差があります)(HOT,COLDの電流が対称ではないので HOT – COLD 入力間のインピーダンスというのは避けます)。
[1a]の定数ではHOT/COLDは対称な電圧になり、入力インピーダンスは HOT – COLD 入力間で20kΩ。

[1-4]*トランスバランス出力を繫ぐ場合は、[1]の定数だとHOT側入力に全電圧が現れCOLD側入力は0Vになります(え、という感じですがそうなります…というものの実測してみるとそうなるのは1kHz以下程度まででそれ以上はHOT-COLD間ではつじつまが合っているのですが対GNDでは複雑な応答をします。トランスによって差があります)。入力インピーダンスは HOT – COLD 入力間で20kΩ。
[1a]の定数ではHOTとCOLDは対称な電圧になり(こちらも同様に1kHz程度以上になると対GNDでは複雑な応答をします)、入力インピーダンスは HOT – COLD 入力間で20kΩ。

一般に差動入力基本の回路として示されていて多くの製品で使われている[1]の定数ですが、接続する出力回路と伝送路を含め、さらに入力は別な機器の入力とパラ接続されたりすることがあるところまで考慮すると[1a]の定数比のほうがいいだろうと思います。

接続する出力回路について補足
*1: 真の電子バランス出力 ここでは(便宜上ということで一般的な呼び名ではありません)、HOT側出力にCOLD側用-1倍ドライバを加えたもの、または、HOT側用とCOLD側用にそれぞれ独立したドライバがあるような、ストレートな回路を呼びます。
*2: サーボバランス出力 疑似フローティングバランス出力とも呼ばれます。バランス出力用IC (SSM2142 , DRV134)などに使われる、出力電流センスによりHOT/COLDのゲインバランスを変える回路を呼びます。

[2] [1]の回路のHOT,COLD両入力にバッファーアンプを加えた回路

入力インピーダンスは

[2-1]*アンバランス出力を繫ぐ場合は、HOTまたはCOLDに信号、空いている側はGNDに接続します。入力インピーダンスはRi(ここでは100kΩ)次第。COLD(またはHOT)-GND接続は必ずアンバランス出力端で行い、以降バランスで配線します。こうするとバランス接続同様の同相ノイズキャンセル性能が得られます。

[2-2]*真の電子バランス出力(*1)を繫ぐ場合の入力インピーダンスは
HOT側:100kΩ (=Ri)
COLD側:100kΩ (=Ri)

[2-3]*サーボバランス出力(*2)を繫ぐ場合の入力インピーダンスは
HOT – COLD 入力間で200kΩ (=2xRi)

[2-4]*トランスバランス出力を繫ぐ場合の入力インピーダンスは
HOT – COLD 入力間で200kΩ (=2xRi)

入力インピーダンスについてはシンプルです。
高い入力インピーダンスにできますが、入力電圧がバッファーアンプのオペアンプ内部入力段の停止領域に達すると出力反転が起こり出力波形が激しく歪みます(4558系は出力反転が起こる代表的な物です。出力反転なしタイプのオペアンプを使えば穏やかにクリップします)。出力反転が無い場合でもこの回路のままではアンバランスの+24dBu(GML製品他このような出力の機器もあります。バランス出力の機器よりむしろ高いスペックのものも多いです)が受けられないので、入力端にPAD(アッテネーター)が必要です。このためラインレベル回路で使用する場合高い入力インピーダンスが生かせませんが、入力側から見てHOT/COLDが同一の回路である点にメリットがあります。

[3] 反転2段による比較的素直な回路

UREI1176LNの電子バランス入力タイプで使われています。

入力インピーダンスは

[3-1]*アンバランス出力を繫ぐ場合は、HOTまたはCOLDに信号、空いている側はGNDに接続します。入力インピーダンスは10kΩ。COLD(またはHOT)-GND接続は必ずアンバランス出力端で行い、以降バランスで配線します。こうするとバランス接続同様の同相ノイズキャンセル性能が得られます。

[3-2]*真の電子バランス出力(*1)を繫ぐ場合の入力インピーダンスは
HOT側:10kΩ
COLD側:10kΩ

[3-3]*サーボバランス出力(*2)を繫ぐ場合の入力インピーダンスは
HOT – COLD 入力間で20kΩ

[3-4]*トランスバランス出力を繫ぐ場合の入力インピーダンスは
HOT – COLD 入力間で20kΩ

入力インピーダンスについてはシンプルです。
高い周波数の同相ノイズキャンセル効果を得難いですが、現代的なオペアンプを使用すればオーディオ帯域においてはまあ許容できます。

[4] 非反転入力側に反転入力側同様の帰還をかける回路

入力インピーダンスは

[4-1]*アンバランス出力を繫ぐ場合は、HOTまたはCOLDに信号、空いている側はGNDに接続します(未接続にするとゲインが6dB低下します)。入力インピーダンスは15kΩ(10kΩではなく)。COLD(またはHOT)-GND接続は必ずアンバランス出力端で行い、以降バランスで配線します。こうするとバランス接続同様の同相ノイズキャンセル性能が得られます。

[4-2]*真の電子バランス出力(*1)を繫ぐ場合の入力インピーダンスは
HOT側:10kΩ (HOT電圧=-COLD電圧の時)
COLD側:10kΩ(HOT電圧=-COLD電圧の時)

[4-3]*サーボバランス出力(*2)を繫ぐ場合の入力インピーダンスは
HOT – COLD 入力間で20kΩ。

[4-4]*トランスバランス出力を繫ぐ場合の入力インピーダンスは
HOT – COLD 入力間で20kΩ。

フィードバックループにオペアンプが入っていて位相余裕がありません。抵抗だけで組むと発振してしまうことが多いので、この回路例だけコンデンサを記載しています( C3は実験ではあったほうが1MHz近辺で安定でした)。
入力インピーダンスについては接続信号により変化がありますがHOT/COLDで対称性があります。
非反転側フィードバック用オペアンプの出力をCOLD側出力として引き出せばバランス出力が得られます。

この中で最初に出てきた[1]以外は入力インピーダンスは一定、またはHOT/COLDで対称性のある動作です。
[1]は基本の回路といいながら、入力インピーダンスについてはちょっとクセがあるというのを再確認しました。トランスバランス出力やサーボバランス出力を繫いだ場合HOT/COLDの電圧が大きく違っていることがある(信号伝送的には大きな問題はありません。小さな問題はまあ…)点は覚えておいたほうがいいですよね。テストや測定時に突然目にするとどこかが壊れているんじゃないかと余計な時間を費やしたりしてしまうので。[1a]はこの点が改善されています。

2022年7月8日 | カテゴリー : 未分類 | タグ : | 投稿者 : gecko1

スタジオマイクケーブル音声回線のシールド接続について(片端を浮かす是非)

興味深いページを見つけました(というかだいぶ以前に見つけていたことを思い出しました)。

T. Sato様のHP内「雑音の低減のための両端でのケーブル・シールドの接続」
by Tony Waldron and Keith Armstrong 翻訳:T. Sato様
http://t-sato.in.coocan.jp/emcj/0205-75-j.html

T. Sato様サイトのこのページが属するブロックのタイトルは”電気製品の EMC/安全適合性”ですが、アナログオーディオ的に興味深い内容があります。

参照ページを乱暴にかいつまんでしまって申し訳ないのですが、

*ピン1問題について
ピン1問題の”ピン1″というのは、XLR3(3ピンキャノン)の1番ピンのことで、XLR入出力の機器について、リヤパネルのXLR座1番ピンと回路GNDとの接続がXLRのピンにはんだ付けされた電線を介してプリント基板上で行われているもの(今どきの製品では見かけませんが)で発生する場合がある問題です(次で合わせて説明)。

*参照ページの表題にもなっているシールドの両端接続について
欧米ではプロオーディオシステムの配線で音声ケーブルのシールド接続の片端を外す(外したりつけたり試す)(ファンタム電源が通らないのでマイク回線は除くと思いますが)らしいと聞いていましたが実際普通に行われているようです。GNDとアースに関することですので、この点で現状まず日本と差があるのが、金属(導電性)筐体の製品は一般にアース端子付きの3ピンコンセントが使われこのアース(接地)接続は義務である点。日本では(水気のある場所で使用するものなどを除く)100V機器はアース接続は義務ではなく現在の国内流通製品はほとんどが2ピンプラグです(プラグにアース端子無し)。日本製国内流通品を使っている分にはコンセントアース端子経由の機器間のGND接続網は発生しません(注1)。…しかし、内線規程など法的なものもアース付き壁コンセントを推奨してきていますので、時間はかかりそうですが日本も3ピン電源プラグを使ったアース接続が普及していくのだろうと思います。日本の場合アース接続方式が欧米と違うそうなのでアース接続普及で欧米とは違う現象が起こるかもしれません…話がそれました。
アース接続は必須という条件下で、シールド接続の片端を外す、というのは、
ピン1問題とも関連しているのですが、音声ケーブルシールドが両端接続されていて、例えばアース端子から音声ケーブルシールドに流れるノイズ電流がある場合に(コンセント端子側アースによる機器間GND接続と、音声シールド接続による機器間GND接続が、両方同時に存在するのでノイズ電流がある場合両方同時に流れることになる)、ノイズ電流がプリント基板の0V(GND)パターンを通して(=敏感な回路の基準電圧をノイズ電流が揺さぶりながら)流れてしまうので、シールド接続を切ればプリント基板上のノイズ電流をなくせる(=ノイズをなくせる)という手法のようです(義務であるコンセントアース接続は切れないので)。→ → いまやこれはノイズ的に良くないやり方でそもそもこの種のノイズ電流の大部分がプリント基板上を流れてしまうような機器の作りの問題(ピン1問題)だと指摘

日本でシールド接続の片端を外すを実施している設備は僕自身は聞いたことがありませんが、シールド接続とは別な話で、グランド・ループを切る、というのはオーディオ的に基本的なテクニックと思っていました。が、高周波のノイズが以前とは比べ物にならないほど増えた現在、アナログオーディオ機器の接続も参照ページにあるように、
*すべてのケーブルシールドは両端接続する(片端接続はシールドが高周波的なアンテナそのものになってしまう)
*シールドは機器、ケーブル、トータルで”隙間なく”行う(現実的には限度ありますが)
*シールド接続(機器間GND接続)のインピーダンスを徹底的に下げる。加えて、繫げられる箇所は繫ぎまくる(ループ面積を小さくするのが目的なので逆の作用がある(繋ぐと大きなループができるような)箇所は繋ぎません)。
・・切るのではなく、徹底的に繫ぐ、というのが方法論になるということのようです(それでも グランド・ループ は小さいほうがいい、ないほうがいい、という点は基本通りです)。

グランドやアースはとにかく繋げ、ひたすら太くしろ、という話で、昭和の時代(ノイズといえばブーンかジーのハムだった時代)に聞いたわけもわからずの力業でノイズ解決(というか問題を薄める)、が戻ってきたみたいで、あれも方法論として正当だったのかなと感じ入る次第です。

アンバランス機器についても触れています。まずバランス化する、それはできないという場合で問題あるならシールド接続を太くする(場合によっては別途太いGND電線を足すとか)…僕の経験として現場でアンバランス機器にノイズがあってラックマウントの場合、ラックから浮かす(ラックとそのアンバラ機器筐体との電気的な接触をなくす)とノイズが大きく改善する(なくなる)のを何度も経験しています。これは、グランド・ループを切る、状態です。アンバラOUTからアンバラINへの接続は本質的に信号とグランド・ループノイズを区別できないので、ノイズが現れやすいのはわかりますが、ピン1問題のような機器側の問題もある気がします。・・今は自分が設備の現場にかかわる機会がないので予想としてといった程度ですが。
*これはアンバランス機器といってもプロオーディオ設備の話です。ご家庭のシンプルなオーディオ配線で問題になることはないと思います。電源が2ピンプラグならなおさら。

当ページの内容に興味を持っていただいた方は、ぜひ参照元を含むT. Sato様のページを読んでください。ノイズに対して具体的な解決の方法論を含めた多くの情報があります。

注1:この場合も万一の感電防止のためにアース接続は可能なら実施すべきです。安全性の観点からは個々の機器でアースに接続するのがベストでしょうが、接続自体難しい製品も多いので、1箇所、例えばラックキャビネットが金属製ならキャビネット本体、木製なら機器固定ラックアングル金具、などシステムのケーブルがGND共通として多く接続されているところまたは多く接続されている機器(パッチ盤はほとんどがケースも各回線も単独に絶縁されているのでここでいう”ケーブルが多く接続”には含まれません)がいいと思います(そう考えるとラック実装でラックと機器がマウント金具のネジ固定でしっかり電気的に接続される必要があるということになりますが、ラックや機器は大抵、塗装だったりアルマイトだったりの絶縁被膜があるのでしっかり電気的に接続というのは意識しないとなかなか難しいかもしれません)。この接続で感電に対する安全性は高まりますが、もし不幸にもこのシステム内で漏電が発生した場合に、漏電電流がアース接続点までの間にあるシステムのケーブルと接続機器を通過するので、通過経路上にある機器が運悪く故障する可能性があります(くり返しますが漏電が発生した場合です)。その前に漏電ブレーカーが遮断してくれると思いますが、この点一応気に留めておいてください。
漏電ブレーカーと聞いてああそういえばと思った方は漏電ブレーカーの動作テストなどについても調べてみてください。

バランス出力IC(DRV134,SSM2142)-アンバランス入力へ接続時の…

アナログ音声用バランス出力IC(SSM2142,DRV134,THAT1646(は内部回路が異なるようですが),等)は特徴的な差動出力回路でHOT(プラス)側,COLD(マイナス)側どちらかがショートされると反対側がショート分の出力電圧を補うように動作します。サーボバランス出力などと呼ばれることもあるようです。バランス入力、アンバランス入力、どちらへの接続でも同じ出力レベルが得られ、この点がトランスバランス出力回路の動作と同様であり、音声特性、スペースファクタ、コスト等多くの条件がトランスと比較して有利なため現在のプロオーディオ機器ではバランス出力が必要な場合特に理由が無ければバランス出力IC(または同様の回路)が使われます。

バランス出力ICの振る舞いはどのくらいトランス出力同様なのか、特にアンバランス入力への接続時の “ショートされている側” の振る舞いについて確認してみます。

その前に、トランスバランス出力をアンバランス入力へ接続した場合は

↑図のように伝送路上の信号電流はHOTとCOLDのみに存在しこの二つの電流は対称です。この接続はバランス出入力伝送に近いノイズ性能が得られますが、そこの話題は別な機会に、あと、電流が対称であること自体に一つメリットがあります(これも別な機会に)。
トランスバランス出力–アンバランス入力接続の場合「GNDに接続されているCOLD側の電流はHOT側の電流と対称」(=電流についてはバランス接続と同じ)だということから、では、バランス出力ICの出力をアンバランス入力に接続した場合COLD側の電流はどうなっているのか。

結論から言ってしまえば、対称にならないことを確認しました。この回路は抵抗値のばらつきが動作に大きく影響する(入力が差動出力のみならず同相の出力として大きく増幅されてしまったり)ため、実際のIC内部は安定動作する現実的な抵抗値(それでも相当なマッチングです)が選択されているようですが、そうするとアンバランス入力接続時の電流の非対称性は、無視できるほどは小さくなりません。ですが、伝送路上影響が出そうな値ではありません。以下、ここまでに書いてある以上の情報はありませんのでお急ぎの方は読み飛ばしてください。

今回はICはブラックボックス扱いとして実験回路と回路シミュレーターで確認してみます。

使える手持ち部品がSSM2142だったのでそれで以下の簡単な実験回路を作成

バランス入力とアンバランス入力の中間状態である非対称な負荷をいくつか確認します。
オシロによる確認はざっと以下

カーソルでの読み取り(自動計測だとノイズ込みの値で小レベル時に大分大きく出てしまうので)なので値はアバウトです。
負荷が非対称だと電流も非対称になってくるようです。

次にシミュレーター。はTI社のものなのでDRV134になります(動作に多少の差異はあるかも)

まず実験回路同様の定数で確認。
*直流でもいいのですが結果の見た感じを実験回路のオシロに合わせたくて1kHz過渡応答にしました。

以下はR2=0Ω

↓まとめた表 (表のシミュレーター結果は上図のカーソル値と少し異なりますがVoのDCオフセット除くため Vp-p/2 を記載しています。他、小数点以下3桁揃えは見やすさのためだけで元データの有効桁数はバラバラです)。

比較して実測のアバウトさとICの違いを含めた差異はありますが電流が非対称になってくる同様の傾向が確認できます。

アンバランス入力接続時のGNDショートされているCOLD側の電流はHOT側電流より大きくなりトランスバランス出力とは違って非対称になることを確認しました。そしてこのときの非対称の比率は思ったより大きめでした。が、非対称な差分電流の絶対値は比較的小さく、伝送路的には、通常は影響無いと考えていいと思います。
バランス出力ICの振る舞いは、バランス入力への接続でない場合は電圧レベル補償以外はトランスバランス出力とは異なるものだと捉える必要がありそうです。

2022年3月19日 | カテゴリー : 未分類 | タグ : | 投稿者 : gecko1

IDC(圧接コネクター)の疑問なんですが …電線被覆の温度の影響は

こちらの業界では昭和の時代から「ヘッダー」と呼ばれている基板-リボンケーブル(フラットケーブル)接続用のIDC(圧接コネクタ MIL-C-83503形といえばいいのかヒロセ電機製でいうならHIF3)について(というかIDC接続全般)の疑問。

IDCは電線被覆を剥かずに接続するコネクタ全般を指すそうです。電話やLANなどのモジュラープラグやカーオーディオ配線加工なんかで使うエレクトロタップと呼ばれるものなども含まれますね。

IDCは接続加工時に電線側は端子接触部にこすれている部分がそれなりに塑性変形しますが端子側の塑性変形はわずかで、接続状態の維持は主に端子が電線を挟み込むばね性によって保たれています。コネクタメーカーのカタログやらwebやらの資料によれば「初めは信頼性確保のため単線のみの対応だったが、しばらくしてより線も対応できるようになった」とあります。「ヘッダー」の場合は1.27mmピッチのリボンケーブル(フラットケーブル)いわゆるUL2651#28より線がよく使われます。より線の場合の接触状態は下の各引用画像のように電線の芯線同士が ”押し合って” 端子に接しています。逆にいうと、芯線同士が押し合わなければ端子との接触状態は安定しないということであり、芯線を円形に並べようとする”電線被覆”の応力が少なからず寄与していることになります。

↑引用画像:ヒロセ電機(株)様 HP「押さえておきたいコネクタの基本解説!」より
https://www.hirose.comjaproductprConnector_Basic_knowledge_2
↑引用画像:アールエスコンポーネンツ(株)様 HP「タイトな関係~ 用途と接続の原理 ~」より(TE Connectivity様の記事)
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/wire-to-board-connectors-guide

実際に下の画像のようにリボンケーブルの芯線1本だけを端子に挟んでみるとスカスカで保持されません。

そもそも疑問の発端は、ある特注品の製作中にリボンケーブルを「ヘッダー」直後で折り曲げたい場面があり(ストレインリリーフ取付の場合は必ず直後で180°折り曲げが必要なので折り曲げ自体は問題ないことはわかる。ちなみに今回はリリーフなし)、冬で室温が低いのでケーブルが固くなかなかいうことを聞いてくれないので思いついてその付近をドライヤーで温めるとすんなり予定の形になりましたが、しかし直後に「手応えがすんなり過ぎる」と違和感がよぎり、この加熱状態でのヘッダー直近のケーブル曲げ伸ばしは端子接続状態に影響を与えるんじゃないかと気になり始めて悩んだ末、ケーブルを切断して新しいヘッダーに付け直しました。この時、被覆は温度で柔軟性が大きく変化するが、IDCは被覆(の応力)も重要であるのなら温度変化で接触状態に(不可逆的なものも含めた)影響があるのか(あるいはないのか)と疑問がわきました。

次に、前出のドライヤーとか使用環境中の温度上昇ではケーブルは精々50~60℃程度と思いますが、直付けヘッダー(と呼んでいる圧接コネクタを直接基板にはんだ付けするタイプ ↓画像)の場合、手はんだでもはんだ付け作業中の端子と電線の接触部周辺はもっと高い温度になりこの部分の被覆も大分柔らかくなるのではと思いました。被覆の応力が低下して端子ばね性が勝り芯線どうしの位置がずれるようなことがあればずれた位置のままで冷えて固まり接触状態が変化するのではないか、と追加の疑問もわきました。

コネクタメーカーはこういった点も織り込んだ上で設計しているのだろうなとは思うのですが、カタログ、データシートでケーブルの温度変化や高温時の曲げ伸ばしなどについての記載は見たことがないので、それでも前出「手応えがすんなり過ぎる」違和感は気になります。

と疑問はあるものの、ユーザー側では調べようがないので、ここから想像される実際の対応として、「直付けヘッダーの手はんだ付けは1ピンあたりは手早く行い次のピンのはんだ付けには少し時間をおく。はんだ付け中はリボンケーブルのヘッダー付近に力がかからないように注意する」「ヘッダー挿抜時リボンケーブルがやわらかいと感じるほどの温度になっている場合(最近の機械では筐体内温度がこんな風に高いことはほとんどありませんが)は動かさずに冷えるまで待つ」「事後に挿抜の可能性があるヘッダーはストレインリリーフを積極的に使用」といったところでしょうか。